霊長類研究 Supplement
第33回日本霊長類学会大会
セッションID: P19
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ポスター発表
大型類人猿ボノボの生息地利用:画像分類による生息地の再分類への挑戦
*寺田 佐恵子坂巻 哲也望月 翔太古市 剛史湯本 貴和
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抄録

大型類人猿の生息地選好性の解明は,種の特性を明らかにするだけでなく,それらの保全を行う上でも重要である。近年,GIS等の発展により対象種の広域での生息適地の推定が可能となり,ボノボ(Pan Paniscus)についても広域の生息適地モデルが策定された。これは全体を捉える意味で有意義なものであるが,現地情報の不足により,生息地区分が荒く,寝床の場所以外の生息地利用の情報が反映されていない。本研究では,現地踏査に基づく衛星画像の分類により,ボノボの行動圏の生息地区分を再分類し,ボノボの群れによる生息地利用パターンを①遊動②採食③寝床利用の3つに着目して調べた。対象地は,コンゴ民主共和国ワンバ調査地とし,ボノボ1群の群れ追跡の記録(2007-2008)を用いた。画像分類は,まず,既存の森林区分図と浸水地推定図を重ねて大分類を作成し,次に大分類ごとにオブジェクトベース分類を行った。現地情報に基づき,手動で各オブジェクトの生息地タイプを決定した。結果,特徴的な画像を有した二次林内の焼畑耕作地,湿地林内のヤシ林や沼上の草本群落などを新たに抽出することができた。この新たな区分図にボノボの群れの行動記録を重ねた結果,対象群は人の居住区域を避けて遊動し,その中でも,家屋周りの二次林では採食しないが,家屋から少し離れた焼畑耕作地ではほぼ毎月採食を行うという違いが示された。また,発表者らの既存研究より,浸水林は寝床利用には不適であるが重要な採食場所の1つであることが示されたが,今回新たに,河沿いにあるヤシ林や沼での遊動・採食はほとんどないことが示された。以上より,簡易な現地調査と画像分類であっても,大型類人猿の生息地を一定程度は再分類でき,生息地利用の解明に活用できる可能性が示された。画像分類技術を活用するためには,現地の植生や環境条件を空間明示的に集約しておくことが重要と考えられる。

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© 2017 日本霊長類学会
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