霊長類研究 Supplement
第33回日本霊長類学会大会
セッションID: P20
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ポスター発表
山ふる群のニホンザルによるオニグルミ種子採食行動における性差
*島田 将喜加藤 晋悟豊川 春香内藤 将
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抄録

オニグルミ種子の硬い殻の中の果仁は野生動物にとって高栄養な食物資源である。東京都奥多摩湖周辺に生息する野生ニホンザルの群れ(山ふる群)のオトナのオス・メスはともに,春・夏には前年度に落下し脆くなったクルミの種子を破殻し,その果仁を主要食物とする。山ふる群の遊動域内に定めた6か所のクルミパッチにおいて,2016年秋にパッチに訪れるパーティの全個体のクルミを口に運ぶ行動(破殻試行行動)の有無を1分間隔の1/0サンプリング法を用いて記録し,個体ごとの滞在時間,パーティサイズ,個体の属性との関係を検討した。識別された個体のパッチ訪問回数に性差は見られなかったが,1回のパッチ滞在時間はオスの方が長く,訪問個体総数が多いと各個体の滞在時間が短かった。パッチに長く滞在する個体は破殻試行行動を行う確率が高かった。秋にはオスは発情メスに追従するためパーティサイズが大きいと滞在時間が短くなる傾向があるのだと考えられるが,低順位のオスはメスに追従しても,カキの果実など代替する高栄養食物の付近では他の群れメンバーから排除される場合が多い。オスもメスもクルミ種子を採食レパートリーとして認知していたものの,犬歯がメスよりも大きなオスは秋に地上で見出される落下直後の硬いクルミ種子の破殻が比較的容易でパッチでのクルミ採食に時間を費やした一方,メスは春先の脆くなったクルミ種子は破殻し採食するものの代替する果実が豊富な秋には栄養効率のより高い食物を選択したと考えられる。本研究の結果は,クルミ種子の食物としての価値は性や季節により異なり,集団内におけるクルミ食行動の普及や標準化のプロセスは性によって異なる可能性を示唆する。

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© 2017 日本霊長類学会
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