房総半島では外来種アカゲザルとの交雑拡大が心配されている。高宕山自然動物園はニホンザル天然記念物指定地域に隣接する観光施設で富津市が管理している。施設の老朽化で周辺個体の侵入による交雑を心配した富津市は2016年度に全頭検査を実施した。本発表ではこの検査から予想された天然記念物指定地域への交雑拡大につき報告する。交雑は形態(体色および相対尾長)と遺伝子(分子標識)から判定した。遺伝子分析では新たに16種類のSNP(一塩基多型)を利用する方法を採用した。これにより個体交雑度の判定精度が改善できた。結果では,164個体中57個体(35%)が交雑と判明し,交雑個体の約6割が4世代以上の戻し交雑個体に相当する低い交雑度を示した。形態だけで交雑と判定できない個体が多く,一方で交雑度の高い個体もおり,交雑は一過性でないと考えられた。以上の結果は周辺の天然記念物指定地域に外来のアカゲザルの影響が拡大していること示唆する。今回の研究から,遺伝子検査法を改良すること,形態と遺伝子の判定限界の認識を変えること,域外保全のリソースとして高宕山自然動物園のサルを見直すこと,の意義が明らかになった。