ニホンザルMacaca fuscata(以下,サル)の被害対策における群れ管理では,群れ個体数や構成の把握が重要であるが,従来法である直接観察(以下,待ちカウント)は調査に時間を要するという問題がある。これに対して福島県を始め南東北では意図的にサルの群れを追い出してカウントラインを通過させる手法(以下,追い出しカウント)が用いられることがある。追い出しカウントはサルの自発的なライン通過を待つ手順が省かれるため,調査時間が短縮される可能性が高い。そこで両手法の所要時間を定量比較し,新たな調査手法としての可能性を検討した。解析対象は2016-2017年に福島県猪苗代町および福島市で実施された調査のうち,群れの全頭カウントに成功し,かつ所要時間が記録されていた10事例とした。所要時間は対象群の発見から調査完了までの時間とした。待ちカウントは数日の試行を経て全頭カウントに至ることがあったので,これを合わせて1事例として扱った。両手法の所要時間の平均±SDは待ちカウントが294.6分±272.6(n=5,最小43分‐最大689分),追い出しカウントが76.2分±45.4(n=5,最小23分-最大130分)であり,追い出しカウントが短い傾向にあった。追い出しカウントは未だ確立された技術ではないため,実行時の内容や成否にばらつきが大きいものの,今後の改良によって効果的な調査法のひとつとして期待できると考えられた。