霊長類研究 Supplement
第33回日本霊長類学会大会
セッションID: P36
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ポスター発表
勝山ニホンザル集団におけるαオスになる前後の毛づくろい関係
*中道 正之山田 一憲
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抄録

ニホンザル集団の研究はすでに60年を超え,集団の中には第一位オスあるいはαオスと称される最も優位なオスが存在し,時々αオスの交替が生じることもよく知られた事実である。しかし,依然として,αオスになる前後の行動を比較可能なレベルで提示した研究は少ない。そこで,本研究では勝山ニホンザル集団(岡山県真庭市,1958年の餌付け開始)において1993年,及び2003年から2013年まで,毎年の4月から9月までの期間に,同じ方法で収集してきたオトナ(6歳以上のオスとメス,,及び5歳で出産したメス)の毛づくろいデータを基に,αオスになる前となってからの当該オスの毛づくろい関係の変化を明らかにすることを目指した。集団が餌場滞在中に,20分を単位として餌場を巡回しながら,当該セッションでそれぞれの個体に関して最初に発見した毛づくろいを記録した。観察期間の合計12年間に,7頭のオスがαオスになった。これら7頭の成体オスがαオスになる直前(6頭はβオス,,残りの1頭は第4位以下)の1カ月から5カ月間の毛づくろいの頻度(実施した20分ごとのセッション数に対する,当該のオスの毛づくろいが記録されたセッションの数の割合)がおおよそ10%以下であったのに対して,αオスになってからの3カ月間以内の毛づくろい頻度はほとんどのオスで20%を超えた。さらに,,αオスになって半年以上経過してからの毛づくろいの頻度はおおむね10%から20%の間に収斂した。つまり,αオスになると短期的に毛づくろい(特に,オトナメスから受ける毛づくろい)が増加するが,αオスになってから半年以上が経過すると,その頻度は低下し,どのαオスでもかなり類似した範囲に収斂することが明らかになった。

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© 2017 日本霊長類学会
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