霊長類研究 Supplement
第33回日本霊長類学会大会
セッションID: P37
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ポスター発表
嵐山のニホンザル餌付け群における水遊び参加時間の年齢差と飛び込みによる誘い掛け行動
*清家 多慧
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抄録

ニホンザルの一般的な遊びの頻度は1~2歳でピークを迎え,5歳を過ぎるとほとんど見られなくなると言われている。また,社会的遊びにおいては遊びを始めるきっかけとなる誘い掛け行動も知られている。しかしこれらは陸上での遊びについてであり,水遊びについての先行研究はほとんどない。嵐山モンキーパークいわたやまには人工池があり,夏にはニホンザルが水遊びをする。本研究では,水遊び参加時間の年齢差と,水遊びでみられる飛び込み行動が遊びの誘い掛けになっているかどうかを調べるために,嵐山のニホンザル餌付け群を対象に人工池でビデオを用いた定点観察を行った。水遊びの総撮影時間は7時間25分であった。池を遊び場と定義し,水飲み以外で遊び場に来た個体を全て遊び参加個体とした。水遊び参加時間の年齢差については,ニホンザルの一般的な遊びとは異なり,3歳が最も長いという結果であった。また,5歳以上のメス同士での社会的遊びも見られた。水遊びには陸上の遊びとは異なる行動要素(泳ぐ,潜る)を伴うことがあるために,遊ぶ年齢が上にずれたと考えられる。また,5歳以上のメスの遊びが見られたのは,水遊び特有の刺激(冷たさ,音,水しぶき)が興味を引きやすいためであろう。飛び込みに関しては以下の結果が得られた。(1)複数個体参加時の方が単独時よりも飛び込みの生起頻度が高い,(2)参加個体間に積極的な交渉が起こっていない状況(遊び中断時)では,交渉が起こっている場合(遊び中)よりも周りから見えやすい場所から,飛び込み前の姿勢をゆっくりとって飛び込む割合が高い,(3)遊び中断時では遊び中よりも飛び込みの直後に積極的な交渉が起こることが多く,70%以上で交渉が起こっていた。(1)から,飛び込みは何らかの社会的行為である可能性が示唆され,,さらに(2)(3)から遊びの誘い掛けではないかということが示唆される。飛び込むという行動と飛び込む時の音で周りの注意を引いているのかもしれない。

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