主催: 日本霊長類学会
会議名: 日本霊長類学会大会
回次: 34
開催地: 東京都
開催日: 2018/07/13 - 2018/07/15
霊長類において毛づくろいは個体間の絆を強める機能を持つ。ニホンザルを含むほとんどの霊長類では,毛づくろいは通常2頭間で行われる(以下2頭毛づくろい)が,3頭以上が同時に毛づくろいに参加する(以下多頭毛づくろい)こともある。先行研究のほとんどは2頭毛づくろいのみを対象とし,多頭毛づくろいに関する研究はごくわずかである。本研究では,社会ネットワーク分析を用いて,淡路島ニホンザル集団の成体間の2頭毛づくろいおよび多頭毛づくろいのネットワークを比較し,多頭毛づくろいネットワークに特徴的な構造を抽出することを目的とした。スキャンサンプリング法により,餌場を決められたルートで巡回し,その間に発見した成体間の毛づくろいを全て記録した。観察期間は2017年6月から2018年4月の120日間で,計350セッション行った。この期間中に記録した4541エピソードの2頭毛づくろいと540エピソードの多頭毛づくろいを基に,2つの毛づくろいネットワークを作成しネットワークの構造を比較した。多頭毛づくろいネットワークでは,2頭毛づくろいネットワークに比べ,局所的にエッジが密に張られているコミュニティ構造がより強く見られた。ネットワーク上の任意の3頭に着目すると,この3頭が互いに毛づくろい関係を持つ割合は,2頭毛づくろいネットワークよりも多頭毛づくろいネットワークの方が有意に高かった。以上より,多頭毛づくろいネットワークは2頭毛づくろいネットワークよりも凝集性が高く,したがって多頭毛づくろいは,2頭毛づくろいの形で関わるよりも限られた個体間で多く行われていることが示唆された。すなわち多頭毛づくろいは特に親密な個体間で行われることが多いと考えられた。また多頭毛づくろいでは,1度に複数の個体が同時に関わるため,そこに参加する個体にとって他個体との交渉を記憶する負荷が高いと考えられる。そのため多頭毛づくろいは同じ個体間で繰り返し行われるのかもしれない。