霊長類研究 Supplement
第34回日本霊長類学会大会
セッションID: A21
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口頭発表
野生ニホンザルのオスの移籍における社会ネットワーク分析
*川添 達朗Sosa SEBASTIAN張 鵬
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抄録

オスの移籍は霊長類に一般的な現象で,移籍個体は移籍に伴う様々な利益とコストに応じた行動的戦術をとる。オス間の親和的行動は緊張緩和をもたらし,これらの戦術の一端であると考えられるが,集団移籍への影響について量的なデータを基づいた検討は多くない。本研究では,野生ニホンザルのオスにおいて,特定の集団の周辺で新たに観察されるようになったオス(移籍オス)の親和的関係が,その後の集団への加入に与える影響を分析することを目的とする。宮城県金華山島で2008~2009年に観察された移籍オス18頭を分析の対象とした。ネットワーク分析によりネットワーク指標(固有ベクトル中心性,重みづけ中心性)を算出した後,ネットワーク指標と非ネットワーク指標(季節,年齢区分,優劣)を説明変数,その後の集団への加入の有無を応答変数とする一般化線形混合モデルによるロジスティック回帰分析を行った。固有ベクトル中心性と重みづけ中心性が高かった移籍オスは,次の季節にも集団に滞在しつづけ安定した集団メンバーとなる傾向があった。一方,これらの二つのネットワーク指標の値が小さかった移籍オスは次の季節には集団を離れ,集団の周辺でも観察されなくなる傾向があった。移籍オスが観察されるようになった季節や年齢区分,優劣などの非ネットワーク指標は移籍に影響しなかった。これらの結果は,オス間の親和的関係がその後の移籍の有無と関連していることを示している。他のオスと親和的関係を構築することによって攻撃を受ける可能性が減り,移籍が促進される可能性が示唆される。

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© 2018 日本霊長類学会
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