霊長類研究 Supplement
第34回日本霊長類学会大会
セッションID: B13
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口頭発表
リスザル肩甲挙筋・腹鋸筋・菱形筋の形態とその支配神経
*緑川 沙織時田 幸之輔小島 龍平平崎 鋭矢
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抄録

直立姿勢と四足姿勢では肩甲骨と体幹の位置関係が異なり,その機能に関わる肩甲骨と体幹を繋ぐ筋群は興味深い。中でも,腹鋸筋(SV),肩甲挙筋(LS),菱形筋(Rh)は肩甲骨内側縁に停止する筋で,支配神経の連続性から同一系統の筋が分化したものとされる(加藤ら,1978)。今回は,リスザルにおけるこれらの筋の形態と支配神経を調査した結果を報告する。SVは,第1~9肋骨から起始し肩甲骨内側縁に停止していた。LSは,第1~6頚椎横突起から起始し,肩甲骨内側縁の上部1/3へ停止していた。Rhは,項靭帯・第1~5胸椎棘突起から起始する他,後頭骨にも起始を持っていた。項靭帯・胸椎棘突起起始部は,肩甲骨内側縁の下部2/3に停止し,後頭骨起始部は,肩甲骨内側縁の上部1/3に停止していた。SVの支配神経にはC6,7の枝が分布していた。第1肋骨起始部にはC6の独立枝が分布していた。LSにはC4,5の枝が主に分布するが,C6が分布するものも観察された。それぞれの神経は,肩甲挙筋に筋枝を出した後,Rhに至っていた。Rhの後頭骨起始部には,C3またはC4の枝が分布していた。筋形態に注目すると,ヒトと大きく異なるのは,Rhに後頭骨起始部を持つ点である。このようなRhの形態は,カニクイザル(加藤ら,1984)やブタ胎仔(緑川,2017)において観察され,運動様式との関連が示唆される。支配神経に注目すると,SV支配神経はヒトではC5-7が一般的であるのに対し,リスザルではC6,7であった。また,ヒトSVでは第1肋骨起始部に分布する独立枝はC5であることが多いが,リスザルSVではC6であった。LS支配神経は,ヒトではC4,5が一般的であるのに対し,リスザルではC6の分布が観察された。Rhの筋形態が異なる点と合わせると,リスザルLS・SV・Rhは,ヒトとは異なる分化をしていることが示唆された。本研究は京都大学霊長類研究所共同利用研究にて実施された。

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