主催: 日本霊長類学会
会議名: 日本霊長類学会大会
回次: 34
開催地: 東京都
開催日: 2018/07/13 - 2018/07/15
ヒトでは出生後,身長等の成長速度曲線に加速・減速があり,その速度ピークやトラフに基づいて5つの成長期区分が認められる(Bogin, 1999)。これらの区分のうちChildhoodとAdolescenceはヒト以外の霊長類には認められず,人類進化の過程で挿入されたと仮説されている。その要因として未成熟個体の栄養収支(とくに食物獲得)のスケジュール,それは身体発達程度や学習(栄養獲得に関るSkillなど)などが究極的要因であろうと議論されている。さらにエネルギー消費の大きい脳の発達と維持のために,体のほうの成長が抑えられることも要因であろう。ニホンザル(Macaca fuscata)で成長期区分について身体成長パターンの縦断的・横断的分析から検討した。<材料と方法>施設飼育のニホンザルを対象とし,横断的♂1,905頭,♀3,195頭。縦断的(0-1歳,および2-7歳の年齢)♂32頭,および♀30頭を計測した。縦断的個体は毎月計測した。体重,頭臀長,大腿長,頭長,胸囲,大腿囲,皮厚(上腕三頭筋部,肩甲下部,腸骨稜上部,腹部,大腿部の合計),精巣サイズか乳首サイズ。成長曲線はloess関数を用いて求め,そこから成長速度曲線を導出した。<結果と考察>幼児期は離乳によって画され,マカクでは0.5才である(乳歯列萌出完了に相当),身体成長のうえでは,その年齢では変曲点を示さない。約1.5才に減速が緩やかになる変曲点が認められる。2.5才以降に加速・減速のサイクルがあり,7才以降は穏やかに成熟する。性成熟に関して♀では(乳首サイズによって)0-2.5才はほぼ極小,2.5-3.5才で増大し,最初の増大期(3-3.5才)に初潮がある。3.5歳以降は増減のサイクルを示し,7才以降は授乳により大きいままとなる。一方,オスも同様に0-3才で漸増し,3.7才をピークとする急増,さらに減少し,ついで4.6才のピークまで急増というように増減のサイクルを7才まで示し,オトナサイズに。このようにニホンザルでは季節性を含む長い思春期をもつようである。