霊長類研究 Supplement
第34回日本霊長類学会大会
セッションID: P11
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ポスター発表
ニホンザルの集合性や行動に地形は影響するか
*鈴木 真理子
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抄録

霊長類の集団移動に関しては,主に社会的な要因や行動学的メカニズムに焦点を当てて議論がなされてきた。ニホンザルでは,これまでの集団移動や集合性の研究によって,明確なリーダーの不在,血縁個体との近接維持,音声の利用などが,ニホンザルに見られる比較的緩いまとまりの集団移動を可能にしていることがわかってきた。一方,動物は真っ平らな平面上を移動しているわけではないので,野生個体群の移動を考える上では,地形を考慮に入れる必要がある。尾根や谷,道路といった空間的特徴の違いは,個体間の情報伝達に影響することが考えられ,集団のまとまりにも影響すると予想される。そこで本研究では,急峻な屋久島に生息するヤクシマザルにおいて,地形的な特徴が群れの移動や集合性に与える影響を検討することにした。調査は2007年4月から9月まで,鹿児島県屋久島西部海岸域に行動圏を持つ2群(以下KA・KZ)を対象におこなった。KAでは5個体,KZでは6個体のオトナメスの個体追跡を行い,10m以内の周辺個体数と発声行動および見まわし行動の記録と,携帯したGPSによる位置情報の記録を行った。地形データは国土地理院の基盤地図情報データをもとに,「道路」「沢」「Topographic position index(TPI)」をGISで解析した。これらの地形によってニホンザルの活動や周辺個体数が異なるかを調べた。KZでは道路の利用が多く,主に休息に使われていた。周辺個体数は道路上で多く,沢ではやや減る傾向が見られた。この傾向は休息時以外でも見られた。一方,KAは沢の利用が比較的多く,主に休息に使われていた。周辺個体数も沢でやや増加した。見通しのよさや樹冠の被度など,道路と沢の空間的構造が似ているため,同様の活動及び集合性を引き起こしたと考えられる。TPIの分析では,尾根と斜面に比べて谷のほうがやや広がる傾向が見られた。ニホンザルの集団的まとまりには,わずかだが地形も影響していることがわかった。

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