主催: 日本霊長類学会
会議名: 日本霊長類学会大会
回次: 34
開催地: 東京都
開催日: 2018/07/13 - 2018/07/15
現生類人猿の中で,オランウータンの臼歯はその歯冠エナメル質表面の皺が特徴的である。こうした皺の成因としては強度を増すための適応ではないかといった指摘はあるものの,明確に解明されてはいない。こうした皺はオランウータンに近縁と考えられる化石類人猿でも見られることがあるが,数量的に比較された例はこれまでのところ見当たらない。エナメル質表面の皺の発達具合やパターンを数量化することができれば,ルーフォンピテクスやシヴァピテクス,コラートピテクス等について,オランウータンとの系統関係を検討するにおいて,歯の全体的な形状の比較に加えて,皺の発達度合いやパターンの特徴などを評価し比較することが可能となる。本研究ではオランウータン大臼歯の3次元表面形状データを用いて,こうした比較のための数量化の方法を検討した。皺は形状的には「溝」と「隆線」が交互に繰り返す構造と理解することができる。本研究では咀嚼によって歯の表面がすり減ることも考慮にいれて,まずは溝に着目して数量化するアプローチを試みた。具体的には,画像の各構成点における平均曲率を計算して「溝領域」を抽出し全体に対する比を計算した。一方,シワの多さの全体的な指標としては,形状データの平滑化前後の表面積を比較し,平滑化によっていかに平らになっていくかを検討した。その結果,オランウータン臼歯の皺の多さはどちらの指標でも表現されたが,咬耗が進んだ歯では溝領域は識別されるのに対して平滑化の効果は減じることが確認された。一方,ギガントピテクス大臼歯を比較に加えたところ,オランウータンとは違ってより太い隆線が発達するために平滑化の効果もより大きいという結果になり,皺パターンが大幅に異なるものでの比較においては注意が必要であることが示唆された。