主催: 日本霊長類学会
会議名: 日本霊長類学会大会
回次: 34
開催地: 東京都
開催日: 2018/07/13 - 2018/07/15
カメラトラップは近年,動物の分布,個体数密度,行動などを調べるための新しいツールとして広く用いられるようになっている。カメラトラップの利用法やカメラトラップ研究全体の傾向を扱った総説がいくつか発表されている一方で,霊長類学におけるカメラトラップの利用に焦点を絞ってこれまでの研究動向を調べた研究はない。本研究では,霊長類を対象としたカメラトラップ研究をシステマティックに検索し,内容の分析を行うことで現在までの傾向と課題を明らかにする。Web of ScienceTM (Core Collection) を用いて,2017年12月までに出版された論文を対象とした論文検索を行った結果,霊長類を対象にカメラトラップを用いた研究論文が57本みつかった。これらはすべて2001年以降に出版されたものであり,論文数は2010年以降増加傾向にあった。論文を研究の主目的別に分類すると,64.9 %(37本)が行動記録であった。霊長類のカメラトラップ論文に占める行動研究の多さは顕著であり,分布や密度に関する論文が大部分を占めるカメラトラップ研究全体の傾向とは大きく異なる。研究内容を精査すると,行動研究では捕食や夜間の行動など直接観察では得難いデータをカメラで取得している研究から,映像の精緻な解析によって社会行動を明らかにした研究まで多岐にわたっていた。また,個体数密度の正確な推定や樹上性種の占有率の推定に成功している生態学的研究もみられた。その一方で,カメラの配置デザインやデータ解析の方法が適切でない研究も散見され,さらにはカメラの設置や分析の方法が詳細に記されていない論文もあった。カメラトラップを用いて新しくかつ信頼性の高い研究をするためには,これまで直接観察だけでは検証できなかった仮説は何か再考するとともに,調査を開始する前に方法について熟慮し,そして用いた方法を過不足なく論文に記述することが重要だろう。