主催: 日本霊長類学会
会議名: 日本霊長類学会大会
回次: 35
開催地: 熊本
開催日: 2019/07/12 - 2019/07/14
ミャンマー中部の後期中新世初頭の化石ホミノイド相について報告する。京都大学霊長類研究所の調査隊は2017年3月から開始したマグウェー市南方のテビンガン地域での古生物学的調査において複数のホミノイド化石を発見した。これまでに7標本(上顎骨1点,下顎骨3点,下顎小臼歯1点,上腕骨端2点)が見つかっており,予備的な解析の結果,複数種が含まれていると考えられる。化石は全て現地の村人によって農作業中に発見されたもので,そのほとんどはサンマージー村とインビンガン村の周辺の畑で見つかった。化石の産出層準はほぼ同じで,イラワジ層最下部にあたる。共産する動物化石の組み合わせを南アジアのシワリク相と比較した結果,約900万年前と推測された。見つかっている標本のうち6標本はほぼ同じサイズで,シワリクからみつかっているシバピテクスSivapithecusに近縁な同一種の可能性が高いが,上腕骨遠位部(肘関節)の化石は非常に大型なので別種と思われる。テビンガン地域に近いインセイ地域からは,2011年にフランスの調査隊がコラートピテクスKhoratpithecusの遊離歯化石を報告している。層序的にはテビンガン地域とほぼ同じ層準になるので,後期中新世初頭のミャンマー中部に最低でも3種類の大型ホミノイドが生息していたことが確実である。ミャンマー中部では,後期中新世末までに動物相のターンオーバーが生じたことがわかっている。テビンガンのホミノイド類も,シワリクと同様に後期中新世中頃にモンスーン気候の成立による乾燥化・草原化が進んだ結果,環境変化に適応できずに絶滅したと考えられる。