主催: 日本霊長類学会
会議名: 日本霊長類学会大会
回次: 35
開催地: 熊本
開催日: 2019/07/12 - 2019/07/14
これまで,飼育動物の環境エンリッチメントとして導入されたチンパンジーのタワー上での行動について,空間利用の基本特性・タワー上での動線・タワーへの昇降行動の観点から,分析を行ってきた。その結果,年齢によりタワーの使い方が大きく違うことが明らかとなった。しかしアカンボウ期(0歳~4歳)は,母親の胸にしがみついて離れない0歳から,運動能力も発達し長距離遊動以外は単独行動することの多い5歳近くまでを含み,単一の年齢カテゴリーで扱うことは出来ない。本研究の目的は,アカンボウ期個体の行動の経年変化を分析し,タワーでの行動の違いの観点から,ニュウジ(アカンボウ前期)とヨウジ(アカンボウ後期)の境界時期の設定を行うことである。札幌市円山動物園のメスのアカンボウチンパンジー1個体を対象に,0歳10ヶ月から4歳まで4年間に渡り継続調査を行い,樹上運動(移動・ぶら下がりなどの大きな動き)における要素の使用回数及び付帯項目(居場所・樹上運動の種類・回数・高度差など)について計測した。タワー上部にいる割合・全行動数・行動に占める移動の比率・樹上運動での高度差は,成長に伴い徐々に増加した。地面からタワーへの昇降行動の回数は3歳から急に増加し,4歳では全行動の過半を占めるようになった。また,年齢×要素別使用回数でコレスポンデンス分析を行ったところ,満3歳を境界として要素使用の傾向が大きく変化した。4歳になると全行動数が減少しタワー下部での動きが多くなるなど,コドモ期の行動に近いパターンが現れ始めた。以上のことから,タワー利用の観点からアカンボウ期を前後期に分類する場合,タワー昇降行動とタワー使用要素の傾向が大きく変化する満3歳を境界として,0~2歳をニュウジ,3~4歳をヨウジ,とすることが適当である。なお0歳児は,自力行動が殆ど見られない時期が長く,母親や近しい個体の位置や行動の影響が大きいため,取扱いには注意が必要である。