霊長類研究 Supplement
第35回日本霊長類学会大会
セッションID: P11
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ポスター発表
葉食性キツネザルにおける苦味受容体TAS2R16の機能進化
*糸井川 壮大早川 卓志今井 啓雄
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抄録

苦味感覚は食物中の毒物感知に重要な役割を果たしており、苦味受容体(TAS2R)を介して知覚される。霊長類は20-30個程度の苦味受容体を持つが、その一つであるTAS2R16は多くの霊長類でβグルコシドと呼ばれる苦味物質によって特異的に活性化される。βグルコシドは植物の主要な二次代謝産物であり、毒性を示す青酸配糖体などを含む。そのため、葉食性の種と果実食性の種では、解毒機能に由来するβグルコシドへの耐性の差やこれに応じた苦味感受性の差が存在すると予想される。本研究では、葉食性のキツネザル(インドリ科、イタチキツネザル科、ジェントルキツネザル)と果実食性のキツネザル(コビトキツネザル科、キツネザル科)のTAS2R16の機能を、天然のβグルコシドであるサリシン、アルブチンを用いた細胞アッセイによって解析した。その結果、葉食性のキツネザルのTAS2R16は総じて果実食性のキツネザルに比べてβグルコシドに対する感受性が低いことが明らかになった。特に、青酸配糖体を多量に含むタケを主食とするジェントルキツネザルはβグルコシドに対して殆ど応答しなかった。そして、本種に近縁でβグルコシドに対して応答性を示すワオキツネザルとの配列比較から、応答性の差違を生む可能性のあるアミノ酸残基を複数同定した。この結果を元にジェントルキツネザルのこれらのアミノ酸残基に対して部位特異的変異導入を実施し、細胞アッセイによって各残基の機能を解析した。本発表では、これまでに得られた結果から葉食性キツネザルのTAS2R16の機能変化の進化的背景とその適応的意義について議論する。

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© 2019 日本霊長類学会
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