主催: 日本霊長類学会
会議名: 日本霊長類学会大会
回次: 35
開催地: 熊本
開催日: 2019/07/12 - 2019/07/14
3色型色覚が一般的な霊長類の中で,中南米に生息する広鼻猿類は,同一種内に色覚の多型があるユニークな存在である。多くの広鼻猿類は,長波長系色覚遺伝子(X染色体上にあるL/Mオプシン遺伝子)を複対立遺伝子として有するため,異なる型の対立遺伝子を持つヘテロ接合のメスは3色型色覚になり,ホモ接合のメスとすべてのオスは2色型色覚になる。このように,同一種内での色覚多型現象の至近要因が解明されつつある一方で,各色覚型が優位になる状況ついては,未解明な点が残されている。そこで,本研究では,遠くから顕在色の物体を検出する遠距離視条件下における3色型色覚の優位性について調べた。調査は日本モンキーセンターの放飼場で飼育されているボリビアリスザル(Saimiri boliviensis)を対象におこなった。観察対象のリスザルにピーナッツを与え,食べ残した殻に付着した口腔内細胞を採取し,M/Lオプシン遺伝子の塩基配列から各個体の色覚型を調べた。その結果,放飼場内には,2色型色覚の個体と3色型色覚の個体がいることが明らかになった。次に,赤(顕在色)と緑(非顕在色)に着色したピーナッツを放飼場の植生内に設置し,ピーナッツの5m圏内に入った個体,最初にピーナッツを獲得した個体,および5m圏内に入ってピーナッツを獲得するまでの経過時間を記録した。発表では,各色のピーナッツの発見効率の違いを色覚型間で比較し,3色型色覚の適応的意義について考察する。