霊長類研究 Supplement
第35回日本霊長類学会大会
セッションID: P14
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ポスター発表
ボノボの離乳期の親子間の葛藤:姉/兄が母乳を飲んだ事例
*坂巻 哲也
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抄録

【目的】哺乳類では離乳をめぐる親子の対立が観察される。子が離乳の時期を迎えると,母親は自らの適応度をあげるため,次の子の方へ投資を増やし,子の方はできるだけ自分への世話を母親から引き出そうとすると考えられる。実際にボノボやチンパンジーでは,母親の注意を引く,離乳期の子のフィンパー・スクリームが頻繁にみられる。その際,ボノボの母親に,離乳のための積極的な拒否はほとんど見られない。大型類人猿の出産間隔は4年から9年と長い。ヒト科の中で,ヒトの出産間隔はとくに短い。ボノボでは出産間隔が比較的短い場合に,母親が二人の子を同時に運搬することがある。幼子を世話する負担は,出産間隔を限定する要因の一つだろう。本発表では,下の子が生まれたとき,上の子が母親の乳房を吸った観察事例を報告する。【方法】調査対象は,ルオー学術保護区にある調査地ワンバのE1集団とPE集団のボノボである。【結果】2017年2˜7月の調査期間中,母Ichiの5歳になる息子Isaoと,母Marieの3歳弱の娘Marinaが,それぞれ妹がいるにもかかわらず,母親の乳首を吸うシーンが観察された。母親には少し妨げようとする素振りも見られたが,概して子が飲むのにまかせていた。下の子による邪魔は見られなかった。いずれの事例も,上と下の子の間の出産間隔は3年未満で,ボノボにしてはかなり短い方だった。【考察】二人の子を同時に運搬する母親ボノボは,一部のメスに観察される。体力のあるメスと思われる。今回の観察事例で上の子が母乳を飲むとき,母親はだいたい許していた。下の子の妨害も入らなかった。それなりに十分な母乳が出ていたのではないか。運搬,授乳という子の世話を二個体にするとなると,母親の負担はかなり大きいだろう。ボノボでは,出産間隔が3年未満と短いときでも,二個体の子育てに対応できることがあるようだ。今後,出産間隔に応じて幼児死亡率に違いがないかなど,更なる観察と分析が必要である。

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© 2019 日本霊長類学会
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