霊長類研究 Supplement
第35回日本霊長類学会大会
セッションID: P13
会議情報

ポスター発表
ダナムバレイに生息する野生ボルネオオランウータンにおけるオスの繁殖成功
*田島 知之久世 濃子金森 朝子蔦谷 匠Mendonça Renata S.山崎 彩夏Malim Titol P.Bernard HenryKumar Vijay S.井上 英治井上ー村山 美穂
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】オランウータンの性成熟したオスは、優位形態であるフランジオスと、劣位形態であるアンフランジオスに一般的に分けることができ、どちらの形態のオスが子を残すかについて研究が行われてきた。野生のボルネオオランウータン(Pongo pygmaeus)を対象として二次林で行われた先行研究(Goossens et al., 2006)では、8個体中7個体がフランジオスの子であったが、アンフランジオスも1個体だけ子を残していたことを報告している。また、半野生個体群からは、アンフランジオスが初産の子の父親となることが報告されている(Tajima et al., 2018)。本研究では、攪乱の少ない原生林に生息する野生ボルネオオランウータンを対象として、どのようなオスが子を残すのか調べた。【方法】2007年および2011年から2016年にかけて、マレーシア・サバ州・ダナムバレイ自然保護区において、野生ボルネオオランウータンから糞を採取した。8組の母子を含む32個体について糞からDNAを抽出し、マイクロサテライト11領域について遺伝子型を決定した。CERVUS(Kalinowski et al., 2007)を用いて、母親が既知の8個体について父親を推定した。【結果】8個体中、5個体の父親を推定することができた。うち4個体はフランジオス2個体が残していた。残る1個体はアンフランジオスの子であったが、初産ではなかった。【考察】多くの子の父親がフランジオスである一方で、アンフランジオスも子を残していた。この結果は、二次林で実施された先行研究と一致しており、生息環境によらないボルネオオランウータンの一般的な傾向であると考えられる。また、複数個体のオスが子を残していたことから、原生林に生息する野生ボルネオオランウータン個体群において、1個体の優位なオスが全ての繁殖成功を独占することは不可能であると考えられる。さらに、半野生個体群の先行研究とは異なり、フランジオスも初産の子を残していたことから、未経産雌と交尾する代替繁殖戦術を形態によらず採用している可能性が示唆された。

著者関連情報
© 2019 日本霊長類学会
前の記事 次の記事
feedback
Top