主催: 日本霊長類学会
会議名: 日本霊長類学会大会
回次: 35
開催地: 熊本
開催日: 2019/07/12 - 2019/07/14
集団での生活は, そこに属する個体に採食効率の上昇, 繁殖機会の増加, 捕食圧の軽減など様々なベネフィットをもたらす。しかし同時に, 集団内の個体同士は互いに繁殖や採食をめぐる競争関係にある。そのため, 集団の中で生きる各個体は, 集団内の競争によるコストが集団生活のもたらすベネフィットを上回らないよう, 集団内の衝突を抑える必要がある。チンパンジー(Pan troglodytes)は, 強い離合集散性を持つことで知られ, 一頭から十数頭と規模・構成共に変化に富むパーティを形成する。本研究では, チンパンジーの離合集散性, 特に離散傾向に影響する要因として, 集団内の攻撃交渉と発情メスの存在に注目した。2018年の約6ヶ月間, ウガンダ共和国カリンズ森林保護区にてチンパンジーM集団のオトナオスを対象に, 終日個体追跡を行った。調査の結果, 発情メスの存在時では, 不在時に比べパーティ内のオスの数は有意に増加した。発情メスの不在時にはオスは一頭から三頭の小さなパーティで過ごす頻度が高い傾向が見られた。特に, 低順位のオスは高順位のオスに比べ, 一頭で過ごす頻度が有意に高かった。発情メスの有無に関わらず, オス一頭あたりの示す攻撃交渉の頻度はパーティ内のオスの数と有意に相関していた。以上より, オスのチンパンジーは各個体の持つ順位に応じて異なるパーティ参加傾向を持つことが示唆された。これまで離合集散型の遊動傾向は採食効率や繁殖行動により説明されてきたが, 他のオスからの攻撃や緊張状態の回避も, チンパンジーの離合集散性を作りだす要因であると考えられる。