主催: 日本霊長類学会
会議名: 日本霊長類学会大会
回次: 35
開催地: 熊本
開催日: 2019/07/12 - 2019/07/14
京都市動物園では,2009年に同園飼育のチンパンジーを対象に認知課題をおこなってきた。課題は同園のチンパンジー屋内居室に隣接した課題用ブース(通称「勉強部屋」)でおこない,基本的に群れの全個体が参加できた。勉強部屋壁面に,15インチタッチモニターが2台(後に1台増設して3台)設置され,どの個体も触ることができた。課題はすべてコンピュータにより制御され,アラビア数字を使った系列学習課題で,画面中の白丸○に触れると,画面中に数字が提示された。数字の昇順に画面中のすべての数字に触れるとチャイム音とともにリンゴ片が報酬として与えられた。誤った順に数字に触れると課題が暗転して,○の画面に戻った。課題開始当時は大人4個体(雄1雌3)の群であり,初日から当時12歳の雌個体が画面に触れることができた。この個体はすぐに課題手続きを学習し,食物報酬を獲得した。他の個体は課題を行う個体を観察し,当時推定32歳の雌個体が3日目に課題を開始し,12日目には当時21歳の雄個体が課題を開始し,14日目には当時20歳の雌個体が開始して全個体が課題を学習した。その後,2010年に加わった当時17歳の雄個体,2013年に誕生した赤ん坊,2015年に加わった当時24歳の雌個体と,新たに加わった個体は群れの他個体が課題を実施している環境下で過ごす中で,数か月から1年以内に課題を開始した。2018年6月に誕生した赤ん坊も2019年3月には画面に手を触れる行動が観察されている。画面に触れる反応の総和を,各年の四半期の中央値で比較すると,もっとも反応数の多かったのが2010年の7月から12月にかけてであり,反応数は3500を超えた。一方,もっとも少なかったのが2014年4-6月期と2015年7-9月期で750以下であった。個体により日により反応数の変動はあるが,全体中央値は2005であり,2019年1-3月も同レベルで維持されている。また期間を通して個体により好みの場所に違いが見られる。