霊長類研究 Supplement
第35回日本霊長類学会大会
セッションID: P26
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ポスター発表
ネパールにおけるアッサムモンキーとアカゲザルの生息地利用と遊動パターン
*小川 秀司KHATIWADA SunilPAUDEL Pavan KCHALISE Mukesh K
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抄録

ネパール中央部のKathmandu北部にあるShivapuri Nagarjun国立公園(北緯27.8°, 東経85.4°)には,アッサムモンキー(Macaca assamensis)とアカゲザル(M. mulatta)が同所的に生息している。アカゲザルと比べて,アッサムモンキーは尾が長く,やや大型であり,崖の岩棚を泊り場にすることが多い。2017年4月から2018年3月に,Nagarjun地域で30頭からなるアッサムモンキーの複雄複雌群(AS群)を,Shivapuri地域で55頭からなるアカゲザルの複雄複雌群(RN群)を観察した。両調査群は,時として国立公園に隣接する耕作地に出てその収穫物を食べる事もあったが,大半の時間は国立公園の森林内を遊動していた。GPSを用いて群れの位置を記録すると,アッサムモンキーのAS群の年間行動域は0.55 km2しかなかったのに対して,アカゲザルのRN群の年間行動域は4.23 km2だった。2時間以上連続して群れを追跡できた時の平均移動速度は,アッサムモンキーのAS群は249.9 m/hだったが,アカゲザルのRN群は959.6 m/hだった。また,15分間隔のスキャニングによって,アッサムモンキーを1,580セッション,アカゲザルを2,017セッション,群れ内の各個体の位置を記録すると,アッサムモンキーが地上に下りたのはわずか6.0%で,残りの94.0%は樹上で採食・移動・休息をしていたのに対して,アカゲザルは41.5%しか樹上にいなかった。この国立公園にはヒョウ(Panthera pardus)も生息しており,アカゲザルがヒョウに捕食された事例も糞分析によって確認されている。アッサムモンキーの極めて高い樹上性は,彼らの捕食回避戦略の表れであると考えられたが,採食戦略の違いも両種の生息地利用と遊動パターンの相違に関係していたかもしれない。そして,アッサムモンキーとアカゲザルの生息地利用の相違が,両種の同所的な生息を可能にしていると示唆された。

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© 2019 日本霊長類学会
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