主催: 日本霊長類学会
会議名: 日本霊長類学会大会
回次: 35
開催地: 熊本
開催日: 2019/07/12 - 2019/07/14
入れ子のカップ課題は、ヒト幼児の認知発達を調べる手法の一つとしてGreenfieldら(1972)が開発し、ヒト以外の霊長類との種間比較にも用いられてきた。従来の分析では、部品集積型(Subassembly)とよばれる、複数のカップをかさねたものをまとまりとして組み合わせるという操作方略が、発達の後期にあらわれ、言語発達との連関も示唆されている。ただ、部品集積型の組み合わせは、ヒト幼児以外のチンパンジーやフサオマキザルでもみられ、単独では種間比較や言語進化の指標とならないことも明らかになった。そこで、チンパンジーとヒト幼児を対象に、カップ操作の3つの要素のみを抜き出し、時系列にそって記述するという方法を用いて、行為の文法的規則性について分析をおこなった。チンパンジーとヒトの双方で、部品集積型の組み合わせが増加するにつれて、最終的にカップをすべて入れ子状に組み合わせる成功率が上昇することがわかった。しかし、カップを組み合わせる際の効率性を調べると、チンパンジーとヒトで共通して、試行錯誤的に組み合わせを変えるという操作が観察された。最終的なゴールに到達できないばあいには、隣接したカップ同士を組み合わせるという方向への修正の困難さが原因として推察された。階層性と効率性の両面で、チンパンジーとヒトの類似性が示されたといえる。ヒト幼児では実際の発話から言語の階層性との関連を調べ、チンパンジーでは新たな場面設定で部品集積型が増加するかを検証していきたい。