霊長類研究 Supplement
第36回日本霊長類学会大会
セッションID: A06
会議情報

口頭発表
アカゲザル(Macaca mulatta) 精巣の精子形成における組織学的な季節変動
杉山 宗太郎今村 公紀糸井川 壮大吉村 崇今井 啓雄
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

アカゲザルなどの一部のマカク類は秋から冬にかけて季節性の繁殖を行う。こうしたマカク類では繁殖期に精巣の肥大化と精巣内での活発な精子形成が見られるのに対し、非繁殖期では精巣が小さくなり、大部分の精細管で精子形成が停止する。しかしながら、年間を通した精細管の組織学的解析は行われていない。そこで、本研究では屋外飼育のアカゲザルから2ヶ月おきに計6個体の精巣を採材し、精細管における精子形成の季節変動について組織形態学的に検討した。具体的には、採材されたアカゲザル6個体の精巣サンプルを用いてHE染色による精細管1つ当たりの全体面積、管内腔面積、細胞数などの組織学的な統計解析を行った。 解析の結果、精細管の全体面積と細胞数は12月から2月にかけて有意に減少し、8月から10月にかけては有意な増加が見られた。また、精細管の内腔面積は8月から12月にかけて有意に増加し、2月から4月にかけて有意に減少した。これらの結果から、精細管全体面積と内腔面積は異なった季節変動パターンを示すことが確認された。また、細胞数の変化から、各精細管内の細胞密度は季節を通してほぼ一定であることが確認された。さらに、アカゲザルでも非繁殖期にリスやシリアハムスターと同様、精母細胞や円形型精子細胞までの分化の停止を伴った精巣の退縮が起こっていることが確認された。今後は生殖細胞特異的な分子マーカーを用いた免疫染色を行い、各時期の精原細胞、精母細胞、精子細胞の種類や分布を解析する予定である。

著者関連情報
© 2020 日本霊長類学会
前の記事 次の記事
feedback
Top