主催: 日本霊長類学会
会議名: 日本霊長類学会大会
回次: 36
開催地: オンライン開催
開催日: 2020/12/04 - 2020/12/06
腸管上皮細胞は、栄養素の消化吸収だけでなく異物の認識においても重要な機能を担っている。近年、腸管上皮に極めて少数存在するTuft細胞が寄生虫感染時に免疫を活性化するセンサー細胞であることが明らかになった。現在までげっ歯類を中心に解析が進められているが、げっ歯類と霊長類では生体機能に隔たりが存在する。しかし、解析系が乏しいため霊長類における機能解析は進んでいない。そこで、霊長類Tuft 細胞の解析基盤を構築するため、幹細胞の三次元培養系であるオルガノイド培養法を用いて腸管上皮細胞を培養することで、in vitroにおいてマカク由来Tuft細胞の作出を試みた。まず、アカゲザル (Macaca mulatta) およびニホンザル (Macaca fuscata) の小腸組織から腸陰窩を単離し、特殊なゲルに包埋することで小腸オルガノイドを作製した。次に、培養した小腸オルガノイドにInterleukin-4, 13 (IL-4, IL-13) を添加し3日間培養することでTuft細胞への分化誘導を試みた。その後、Tuft細胞の免疫組織化学染色を行うとともに、RNAを抽出し次世代シーケンサーによる発現遺伝子の網羅的解析を試みた。結果より、IL-4, IL-13はオルガノイド中のTuft細胞数を有意に増加させた。RNA-seqより、Tuft細胞マーカー遺伝子や免疫関連遺伝子の発現が有意に増加していることを確認した。今回我々は、世界に先駆けて非ヒト霊長類由来の消化管オルガノイドの培養に成功した。IL-4, IL-13によるTuft細胞数の顕著な増加は、生体内の免疫応答を模倣していることから、本培養系が消化管機能のin vitro解析系として適していることが示唆された。今後、本培養系を用いて霊長類固有の消化管メカニズムが存在するか解析を試みる。