霊長類研究 Supplement
第36回日本霊長類学会大会
セッションID: P08
会議情報

ポスター発表
集団遺伝学的解析が明らかにした日本のクモザル類の多様性
北山 遼白井 温根本 慧田和 優子綿貫 宏史朗早川 卓志
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

クモザル類(霊長目Ateles属)はメキシコからボリビアまでのアメリカ大陸の熱帯林に広く分布する新世界ザルの1グループである。中南米の熱帯環境に適応した多様な生態や形態をもち、現在、少なくとも7 種に分類されるのが一般的である。日本国内では現在、約30の動物園で約150頭が飼育されている。日本では長らく、クロクモザル、ケナガクモザル、ジェフロイクモザルの3グループに大別されて飼育が行われてきた。これらの3グループが現在分類されている7種それぞれにどのように対応するかは不明である。クモザル類のほとんどの種が絶滅の危機に瀕している今、生息域外での適切な保全と理解の実践のためには、飼育個体の種を正確に把握することが重要である。そこで本研究では、日本国内の飼育クモザルを、遺伝学的なエビデンスに基づいて種判定することを目的とした。 日本動物園水族館協会加盟園館で飼育されているクモザルから福祉に配慮して遺伝試料を採取し、ミトコンドリアゲノムDNAのシークエンス多型解析および核ゲノムマイクロサテライト領域のフラグメント解析を実施した。これを由来がわかっている野生群の先行研究の結果と比較したところ、日本には7種分類中4種が存在することが示唆された。この解析結果と飼育園館所蔵の家系情報を比較したところ、雑種個体も多数存在する可能性が明らかになった。そこで本発表では、本研究の結果に基づいて日本国内のクモザル類の適切な飼育、管理のあり方を提案するとともに、遺伝学的研究が飼育動物の保全に貢献できる可能性について議論する。

著者関連情報
© 2020 日本霊長類学会
前の記事 次の記事
feedback
Top