霊長類研究 Supplement
第36回日本霊長類学会大会
セッションID: P12
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ポスター発表
ウガンダ共和国ブウィンディ原生国立公園におけるマウンテンゴリラの糞中グルココルチコイド濃度と観光の関係についての予備的な報告
大塚 亮真山越 言木下 こづえ
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抄録

観光はマウンテンゴリラの保全において重要な役割を果たしているが人獣共通感染症やストレスなどの影響が懸念されてきた。マウンテンゴリラの行動と観光の関係を調べた研究はあるが副腎機能と観光の関係を調べた研究はない。 2018年5-6月と9-10月にブウィンディ原生国立公園の1つの人付け群の15個体から新鮮糞を採取してEIAにより糞中グルココルチコイド(fGC)濃度を測定した。ゴリラのfGC濃度と性、年齢、日平均気温、そして観光との関係を明らかにするために個体差を考慮したベイズ階層モデリングをおこなった。観光の指標として1日の観光客の総数と観光客の訪問回数を共変量とした2つのモデル(N = 320)を構築した。 fGC濃度はメスよりもオスのほうが低く(中央値 = -0.15, 97% BCI = -0.28 – -0.02)オトナよりもアカンボウのほうが高かった(中央値 = 0.30, 97% BCI = 0.11 – 0.50)が日平均気温と明確な関係はなかった。fGC濃度は観光客の総数が多いほど高く(中央値= 0.07, 97% BCI = 0.02 – 0.12)、訪問回数が1回だった場合よりも2回(中央値 = 0.21, 97% BCI = 0.10 – 0.31)または3回(中央値 = 0.56, 97% BCI = 0.32 – 0.80)だった場合のほうが高かった。予測精度は訪問回数を共変量としたモデルのほうが高かった。 観光客の総数は解釈が難しく予測精度の観点からも訪問回数を共変量としたモデルを支持したい。観光客の訪問回数の増加に伴うfGC濃度の上昇は、移動・監視コストの増大や採食効率の低下と関係があるかもしれない。 しかし、このようなfGC濃度の一時的な上昇を慢性ストレスと結びつけることはできず、免疫や繁殖に負の影響を及ぼしているかについてはさらなる検証が必要である。

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© 2020 日本霊長類学会
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