霊長類研究 Supplement
第36回日本霊長類学会大会
セッションID: P18
会議情報

ポスター発表
humeral torsionと胸郭扁平化の起源-テナガザルとヒト・大型類人猿との違い
藤野 健
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【はじめに】ヒトと大型類人猿(ヒト科)では上腕骨が遠位端に向かうにつれ捻れ、ヒンジ関節としての肘関節を構成する上腕骨滑車の回転軸が内旋している(humeral torsion)。これは肩甲骨が胸郭の背側に位置し肩関節が側方を向いた状態で上腕骨頭が関節していても、前腕より遠位部を胸郭の外側方にではなく胸郭前方に配置することを可能とさせる。一方、小型類人猿のテナガザル(テナガザル科)では上腕骨のtorsion が観察されず、前腕は屈曲に伴い体幹の前外側方に突き出る。共通祖先から如何にこの違いが派生・成立したかを考察した。
【アジアのコロブスとの比較】腕渡り+二足歩行性を示すアカアシドゥクラングール並びにキンシコウでは,胸郭は扁平化せず、肩甲骨はその側方に配置する。 torsionを示さない上腕骨に関節する前腕骨は屈伸に伴いほぼ傍矢状面上を回転運動する。
【humeral torsionの機能的意義】ヒト科に於けるhumera torsionの成立は幹を前肢で保持しての垂直移動動作並びにこれを通じての二足歩行に資する後肢強化に、また体幹前方に拳を握り指背を地面に着けるナックルウォーキングの成立には有利な改変であり、他方、テナガザルの無torsionは高度な腕渡りに対する適応的利点を含むと考えられる。
【テナガザル科とヒト科との分岐】以上から、ヒト上科の共通祖先では胸郭の扁平化は進んでおらず、前腕が傍矢状面上で動作する初期段階の腕渡り+二足歩行者であったが、腕渡りに習熟が進んだ小型類人猿に二次的にtorsionが加えられヒト科が成立した、或いはヒト科のtorsionが失われテナガザル科が派生したのではなく、小型類人猿は胸郭を扁平化しつつもhumeral torsionを生ぜず、一方、ヒト科では胸郭の扁平化+humeral torsionをセットとする進化に向かったと考えた。

著者関連情報
© 2020 日本霊長類学会
前の記事 次の記事
feedback
Top