霊長類研究 Supplement
第36回日本霊長類学会大会
セッションID: H02
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中高生発表
ヒトの心性と神社空間-神社空間でヒトが和みを感じる理由を考える-
河野 美羽
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抄録

現代の日本人にとって一種の文化ともいえる神社神道がなぜ日本人の心性に宿り続けてきたのかを、国分寺高校生や東京外語大学の留学生へのアンケート、文献調査大学教授への質疑応答などを通じて明らかにしていったアンケートは神社を訪れた際の実体験をもとに答えてもらう質問と神社ないしは神道についての考えを示してもらう質問とを複数答えてもらった。アンケート調査の結果、共通点として挙げられたのは神社空間で感じる「何か」であった。具体的な単語としては「穏やか」や「平和的」があった。そしてその両者にそのような雰囲気をもたらすものとして挙げられたのは「自然」であった。これは日本人も留学生も同じである。 相違点としては「神道」を宗教としてとらえるか否かである。留学生が神社に参拝する行為に宗教性を感じるのに対して、高校生は「文化」や「慣習」としている。日本人が神道を宗教と感じない最もの理由は経典やキリスト教の洗礼のような明確な契約が存在せず、宗教が持つ集団やヒトの行動を律する境界があいまいであるからであろう。そうした中で七五三や初詣が行われることで文化的な面が大きくなっていると言える。 また共通点として挙げられた「自然」が和やかな雰囲気をもたらす理由については古神道を含めた自然崇拝の点に目を向けた。神社の形態の変容があるとはいえ、神社という空間は、ヒトと神とされる自然とをつなぐ場 所である。ゆえに神社空間に存在する自然に無意識に何かを感じるのではないだろうか。古来ヒトは自然と対峙し、その恩恵を受けたり、様々な災害に襲われたりしながら生きてきた。自然とヒトとの関係がある意味凝縮して日常の中のある特異なスポットとして表れているのが神社なのではないか。エドワード・O・ウィルソンの提唱した「バイオフィリア」の概念と神社空間がオーバーラップする。ヒトの心性を人類学的な視点でとらえながら、日本人と神社の関係について考察していきたい。

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