主催: 日本霊長類学会
会議名: 日本霊長類学会大会
回次: 37
開催地: オンライン開催
開催日: 2021/07/16 - 2021/07/18
p. 38
新潟県妙高市の笹ヶ峰地域は標高約1,300mの山地帯に位置し、11月から5月という長い期間、積雪のため交通が閉ざされる。1928年から京大山岳部が山小屋を運営しているが、付近でニホンザル(以下、サル)が観察されたという記録はなかった。しかし1980年頃から釣人による目撃例が聞かれ、2002年8月以降は京大山岳部関係者などによる無雪期の観察例が相次ぐようになった。2019年3月には京大と日本モンキーセンターの合同チームが積雪期にもサルの群れを確認した。第二期新潟県ニホンザル管理計画(新潟県, 2017)によると、当該地域周辺には妙高個体群として3群111~150頭が生息する。しかしその遊動域は主に笹ヶ峰よりも高度が低い人里に近接した地域であり、笹ヶ峰で観察されたサルはこれらとは異なる群れである可能性が高い。近年笹ヶ峰では草地や湿地が減少し、笹ヶ峰牧場の放牧地の囲い柵と放牧頭数の減少もあり、森林化が進みつつある。そこで本研究では、笹ヶ峰のサルの生息状況を明らかにし、今後も継続可能なサルを含む中大型哺乳類の分布や植生分布のモニタリングの道筋をつくることを目的に、2020年1月よりトヨタ環境活動助成プログラムの支援を得て調査を開始した。調査方法は目視、食痕やフンなどの痕跡、センサーカメラのほか、積雪期の調査ではドローン(Mavic2Pro)を活用した。積雪期には広葉樹が落葉し、上空からでもサルを発見しやすい。ドローンが対地高度130m程度で静止した状態では、サルはドローンを気にすることなく活動し、個体数をカウントすることができた。また天候等の条件にもよるが、対地高度50~60m程度でも足跡を確認できることもわかった。これらの調査の結果を総合すると、笹ヶ峰には現在、妙高個体群とは別に20~30頭程度の群れが2群以上生息していると推定された。今後は個体識別可能な個体の発見や群れ構成の把握をすすめ、群れの同定をおこない、生息状況を明らかにしていきたい。