霊長類研究 Supplement
最新号
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第37 回日本霊長類学会大会 公開市民講座
  • 原稿種別: 公開市民講座
    p. 9
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/22
    会議録・要旨集 フリー

    日時:2021年7月18日(日) 13:30~16:30

    形式:Zoomによるオンライン配信

    第37回日本霊長類学会大会は、四国で初めての開催であり、学会参加者に今治の魅力を堪能していただくとともに、市民の方々に霊長類の研究を広く知っていただきたいと企画しました。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大が続く現状を考慮し、全面オンライン開催としました。 パンデミックのような感染症は、ヒトの生命を脅かすだけでなく、社会に多大な影響をもたらします。 今回は、「霊長類研究に学ぶポストコロナ戦略」というテーマのもと、ウイルスへの人為的対抗策を持たない非ヒト霊長類がどのように感染症と付き合っているのか、またヒトと近縁のサル類の研究が医学にもたらす貢献について、多様な視点から紹介し、ポストコロナ社会における安全・安心な社会構築の方法について考える機会を提供したいと思います。

    講演プログラム

    司会・趣旨説明 吉川泰弘【岡山理科大学・獣医学部】

    13:30-13:40 開会挨拶・趣旨説明

    13:40-14:20 感染症との闘いに寄与したサル達 -ポリオワクチン開発と撲滅-

      太田芳宏 【株式会社BIKEN】

    14:20-15:00 高齢化社会における脳神経研究

      木村展之 【日本医療研究開発機構】

    15:00-15:40 野生サルの感染症から学ぶ

      明里宏文 【京都大学霊長類研究所】

    15:40-16:20 マハレの野生チンパンジーにおける呼吸器感染症の流行

      花村俊吉 【京都大学アフリカ地域研究資料センター】

    16:20-16:30 総合討論

    企画:第37回日本霊長類学会大会実行委員

    主催:日本霊長類学会

    後援:今治市・今治市教育委員会

自由集会
  • 原稿種別: 自由集会
    p. 11
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/22
    会議録・要旨集 フリー

    日時:2021 年7 月16 日(金) 13:00―15:00

    形式:Zoom によるオンライン配信

    2016年に環境省より、特定鳥獣保護・管理計画作成のための改訂ガイドライン(ニホンザル編)が提示された。ニホンザルによる被害を軽減するためには、単純に捕獲数を増やすだけでは効果は低いこと、また特定計画を策定して計画的な管理を実行することで被害は軽減するとともに、地域個体群の安定化維持を図ることができる。

    管理計画は各自治体主導で実施されることとなっており、県単位で農作物等被害対象の絞り込みも異なり、県をまたいでの連携が図られにくい場合がある。一方で、ニホンザルには個体群としての行動範囲はあるものの、県境は存在しない。環境省のガイドラインにおいても、関係する都府県で協議する場が設置され、継続的に情報交換や協議が図られていくことが望まれることが示されている。四国という地理的に隔離された地域において、個体群の生態や感染症のモニタリングを自治体相互に情報を共有し、継続的に調査研究を行える環境を整備することによりニホンザルとヒトのQOL向上とOne Health が期待される。

    第37回日本霊長類学会大会が初めて四国で開催されることを機に、環境省、各県自治体、被害現場の方、ニホンザルのスペシャリストである霊長類学会研究者と共有の場を設け、石鎚山を最高峰とする”伊予之二名島” 四国でのニホンザル管理のキックオフミーティングとなることを願う。

    主催:第37回日本霊長類学会大会実行委員会

    責任者:小野文子(岡山理大・獣)

  • 原稿種別: 自由集会
    p. 12
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/22
    会議録・要旨集 フリー

    日時:2021年7月16日(金) 15:00―17:00

    形式:Zoom によるオンライン配信

    体幹は四足動物における移動運動の際、動作の軸となり体肢のアンカーとなっているため、霊長類における様々なロコモーション様式に適応した形を理解するためには、非常に重要な研究ターゲットとなり得る。しかしながら、体幹形態を主眼に置いた霊長類研究は体肢に比べ圧倒的に少ない。それは、体肢はダイレクトに支持基体と接し、筋骨格構造が体幹に比べ整理しやすく、動作の機能形態学的解釈が直接的に可能である一方、体幹は支持基体とは離れており、体肢に比べ筋骨格構造が複雑で理解が難しいことが一因となっている。体幹の複雑さは、椎間円板や靭帯、そして固有背筋などが体幹全長にわたり椎骨に張り付いて存在し、椎骨、肋骨、胸骨が胸郭を構成することで一塊の構造物となっているためと考えられる。しかも、一塊となって動くため体肢と比較すると動きはむしろ小さい。このような理由から、体幹の形態分析や動作解析によって得られた機能形態学的解釈には困難を要し、体幹は取っつきにくい、分析しにくい研究対象と捉えられがちであった。しかしながら、徐々に新規の分析方法が導入され、今まで可視化することが難しかった分析しにくい構造でも、新しい視点から体幹を定量的に見ることができるようになってきた。本集会では様々な研究手法により得られた異なる分析結果を突き合わせることで、新たな知見が見いだせるか検討する。紹介を予定している研究手法は、三次元幾何学的形態測定学による胸椎形状分析、筋線維タイプと筋構築解析、筋形態と神経配置分析、三次元動作解析、表面筋電図分析、ビデオ動作解析である。

    プログラム

    1.霊長類・上位胸椎の形状変異から見た機能形態学的解釈

        菊池泰弘(佐賀大・医)

    2.筋線維タイプ構成と筋構築からみた固有背筋の形態と機能

        小島龍平(埼玉医大・保健医療)

    3.脊髄神経後枝内側枝と横突棘筋形態から考える霊長類体幹機能―比較解剖学、肉眼解剖学的視点から―

        布施裕子(リハビリテーション天草病院)

    4.二足歩行時の体幹部の三次元動作解析―ヒト、テナガザル、ニホンザルの比較―

        木下勇貴(京都大・霊長研)

    5.ヒトの雲梯動作時の体幹筋活動

        岡健司(大阪河﨑リハ大・リハ・理学療法)

    6.反復回転運動としてのロコモーションから見たヒト二足歩行の進化

        藤野健(Ken's Veterinary Clinic Tokyo)

    責任者:菊池泰弘(佐賀大・医)、藤野健(Ken's Veterinary Clinic Tokyo)

  • 原稿種別: 自由集会
    p. 13
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/22
    会議録・要旨集 フリー

    日時:2021年7月16日(金) 13:00―16:00

    形式:Zoom によるオンライン配信

    人は古来より様々な動物と関わり合って暮らしてきた。一言に動物との関わりと言っても、関わり方は時代とともに、また各動物種の人間社会の中での位置づけの変化に従って変遷してきた。動物の生態や認知などの理解の深まりや社会の要請により、過去には当たり前だった関わり方を改めることも多くある。様々な考え方がある中で適切な関わり方を考えるためには、動物と人双方のメリット・デメリットを客観的な根拠をもとに議論する姿勢が重要となる。今回、大型類人猿を対象として、過去から現在にかけての関わり方の変遷を様々な立場から紹介する。大型類人猿は古くから野生・飼育下での調査が行われてきており、彼らを巡る考え方もその中で大きく変わってきた。過去・現在を振り返ることで、これから先にわたしたちはどのように彼らと関わっていくのか、考えてみたい。

    話題提供者

     竹ノ下祐二(中部学院大学 看護リハビリテーション学部理学療法学科)

     大塚亮真(京都大学大学院 アジア・アフリカ地域研究研究科)

     赤見理恵(公益財団法人 日本モンキーセンター)

     森村成樹(京都大学 野生動物研究センター 熊本サンクチュアリ)

    ディスカッサント

     樺沢麻美(京都大学 アフリカ地域研究資料センター)

     中村美穂(自然科学映像ディレクター)

    主催:日本霊長類学会保全・福祉委員会

    責任者:山梨裕美(日本霊長類学会保全・福祉委員会、京都市動物園生き物・学び・研究センター)

  • 原稿種別: 自由集会
    p. 14
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/22
    会議録・要旨集 フリー

    日時:2021年7月16日(金) 16:00―19:00

    形式:Zoom によるオンライン配信

    COVID-19 の流行は研究活動に様々な影響をもたらしたが、霊長類を研究対象とするわれわれ研究者はサル(類人猿を含む)との接し方において早急な現場対応が求められた。本感染症に関する確かな情報が少ない中、手探りで判断せざるを得なかった施設・調査地もあれば、これまでと変わらず調査・研究や業務が遂行できた施設・調査地もあった。本集会では、ウィズ・コロナ、ポスト・コロナの時代に、また今後起こりうる新興・再興感染症を見据えて、「サルとヒトとの適切な距離」や「調査・研究における感染症対策」について情報交換を行い、今後の課題について整理したい。

    プログラム:

    1. 「新型コロナウイルス感染症による屋久島、幸島での研究活動への影響」

      杉浦秀樹(京都大学 野生動物研究センター)

    2. 「ニホンザル農業被害地域における感染症対策と今後」

      森光由樹(兵庫県立大学 自然・環境科学研究所/兵庫県森林動物研究センター )

    3. 「剖検を伴うニホンザル調査におけるコロナ禍の影響と対策」

      羽山伸一(日本獣医生命科学大学 獣医学部)

    4. 「コロナ禍にボノボの調査地で過ごす:コンゴ民主共和国、ロマコ‐ヨコカラ動物保護区のエコツーリズ ム・プロジェクトの事例から」

      坂巻哲也(アントワープ動物園基金・ロマコプロジェクト・コンサルタント)

    5. 「コロナ禍における動物園の感染防止対策:動物、スタッフ、来園者が感染しないためにできること」

      田中正之(京都市動物園 生き物・学び・研究センター)

    6. 「コロナ禍における霊長類医科学実験施設のバイオセーフティ対策」

      岡村智崇(医薬基盤・健康・栄養研究所 霊長類医科学研究センター)

    7. 「動物実験環境下における実験者へのB ウイルス感染防御について(仮)」

      角崎英志(株式会社新日本科学)

    共催:日本霊長類学会保全・福祉委員会、サル類の疾病と病理のための研究会

    責任者:藤田志歩、山海直、河村正二、山田一憲(日本霊長類学会保全・福祉委員会)

口頭発表
  • 平田 和葉, 久保 麦野, 高井 正成
    原稿種別: 口頭発表
    p. 26
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/22
    会議録・要旨集 フリー

    動物の歯は摂食行動において食物を咀嚼する役割を果たすため, その咬合面には食物によってつけられる微細な摩滅痕 (マイクロウェア) が残る。マイクロウェアの形状や深度等は摂食した食物の物性に強く影響を受けるため, マイクロウェアの分析により食性の推定が可能である。本研究では, 各地域の食性データが長年蓄積されているニホンザルを対象として, マイクロウェアと各地域個体群の食性との相関性を検討し, マイクロウェア解析による食性推定の手法を検討した。具体的には, 霊長類研究所に保管されている下北, 金華山, 幸島, 屋久島各地で採集された野生ニホンザルの骨資料からそれぞれ10個体前後を選定し, 上顎第2大臼歯から歯科用シリコンを用いてモールドを作成し,共焦点レーザー顕微鏡 (vk-9700) を用いて咬合面の三次元座標データを取得した。このデータを表面性状解析ソフトウェア (MountainsMap) で解析し, 表面粗さパラメータ (ISO25178及びSSFA) を用いて地域間及び季節間の比較を行った。その結果, 下北集団とその他の地域個体群間において, 多数のパラメータで有意差が認められた。下北集団のマイクロウェアは「高さ」及び「ボリューム」を表すパラメータが総じて低い値をとっており, 咬合面の起伏が小さくなだらかな形状をしていることが分かった。一方, 金華山-幸島-屋久島集団の間に有意差はほとんど検出されなかった。 下北集団内での季節間の比較においても有意差は検出されなかった。以上のことから, 下北の地域個体群はニホンザルの中でも特徴的なマイクロウェアを持っていることが示された。この特徴が下北集団における独特な樹皮食などと関連しているかを慎重に検討する必要がある。今後は下北集団に類似した食性を持つ白山の地域個体群のデータを収集し, 比較を行う予定である。

  • 高井 正成, 中務 真人, 江木 直子, 河野 礼子, 浅見 真生
    原稿種別: 口頭発表
    p. 26
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/22
    会議録・要旨集 フリー

    ミャンマー中部の後期中新世初頭の地層から発見された大型ホミノイドの上腕骨化石(IR-5555)の形態を、相同モデル法を使って現生大型類人猿と比較解析した結果を報告する。IR-5555 はオスのゴリラ大の右上腕骨遠位端の化石で、現生大型類人猿と同様に糸巻き状の滑車を持ち、その前面上縁稜には深い切痕があり、小頭が球形に近い。本研究では、このIR5555 と現生大型類人猿(ゴリラ・チンパンジー・オランウータン)の上腕骨遠位端のキャストを作成し、3次元スキャナーで撮像して3次元データにした上で、専用のソフトウェア(HBM-Rugle、メディックエンジニアリング社、mHBM・HBS、産総研)を用いて相同モデル理論による形態解析を行った。相同モデルとは「同一点数・同一位相幾何構造で解剖学的対応のついた形状データ」であり、表面形状の全体的な比較をする際に有効である。本研究ではIR-5555の肘関節とその周辺部の表面形状がどの現生大型類人猿と最も似ているのかを主成分分析で解析した。その結果、第1主成分ではオランウータンとアフリカ類人猿の間に明確な違いが得られ、IR-5555 はアフリカ類人猿の範囲に含まれた。さらに第2主成分以下でもオランウータンに近い結果は得られなかった。 ミャンマーの大型ホミノイド肘化石の形態は現生のオランウータンとは違うロコモーションの可能性を強く示唆している。

  • 西村 剛, 宮地 重弘, 兼子 明久, 木下 勇貴
    原稿種別: 口頭発表
    p. 26-27
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/22
    会議録・要旨集 フリー

    アカゲザルを含むマカクザルでは,音声行動の研究が精力的に行われており,多様な音声レパートリーが知られている。その多くは,ピッチや長さの変化など,音源の操作によっている。しかし,その音源をつくる発声メカニズムに関する知見は技術的限界により限られていた。本研究では,生体のアカゲザルにおける発声運動の様態をハイスピードカメラで撮像することに成功した。脳幹の水道周囲灰白質(PAG)およびその周辺領域を電気刺激して発声を誘発し,発声中の声門領域を,経口でボアスコープを挿入して頭側からハイスピードカメラで撮像した。対象となった2 頭のオス個体で,合計28 回の発声運動を記録した。アカゲザルの声帯の上内側には,薄い膜状の声帯膜があって,声帯との間には浅い溝がある。本研究で記録したすべての発声において,その声帯膜が振動したいたことを確認した。刺激領域や電気刺激を変えることにより,声帯膜と声帯の振動について次の3 つのパターンを観測した: 1) 声帯膜のみ振動し,声帯が振動しない,2) 声帯膜と声帯が独立して同周期で振動する,3) 声帯と声帯膜が連続的に、おおよそ半周期ずれて振動する。また,声帯が振動する場合にはsubharmonics が起きることもあった。これらの結果は,アカゲザルの音源は声帯膜振動が主となってつくられており,声帯振動は付加的であることを示す。 また,近接する声帯膜と声帯という2つの振動体が,相互に作用して,多様な振動パターンにより音源をつくっている可能性を示唆した。声帯膜に関する体系的な研究はないが,その存在は一部のサル類では知られている。一方,ヒトでは,声帯膜がなく,話しことばでは,通常,声帯振動により安定した音源がつくられる。本研究の結果は,サル類にはヒトと異なる発声メカニズムがあり,ヒトの声帯形態と発声メカニズムはむしろ派生的であると示唆する。

    本研究は,科研費(#19H01002,西村; #18H03503,香田)の支援を受けた。

  • 山口 飛翔
    原稿種別: 口頭発表
    p. 27
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/22
    会議録・要旨集 フリー

    霊長類では,多くの種でオスからメスに対する攻撃が見られる。こうした攻撃は群れに在籍するオスによるものも多いが,種によっては群れ外のオスによる攻撃も観察される。特に単雄複雌群を形成する種では群れ外オスからの攻撃がメスにとって大きな脅威となっており,群れの社会構造にも影響を及ぼしている可能性が指摘されている。一方で,複雄群を形成する種でも群れ外オスからの攻撃は見られるが,これまでに複雄群を形成する種で群れ外オスの攻撃を定量的に評価し,それがメスに及ぼす影響を調べた研究はほとんど行われていない。そこで本研究は,交尾期にあたる2019年9月~11月に宮城県金華山島の野生ニホンザルB1 群を終日追跡し,群れを訪れた群れ外オスからオトナメスに行われた攻撃,およびその前後のメスの行動や負傷の有無を記録することで群れ外オスの攻撃がメスに及ぼす影響を検討した。 調査期間中,群れ外オスは1 日に平均6.2 頭確認され,群れ外オスからメスへの攻撃は1 時間あたり平均0.52 回観察された。これは,メスが群れオスを含む全オスから受けた攻撃の約28%を占めていた。また,群れ外オスからの攻撃頻度が高い日ほど,メスが新たに負傷する確率も高くなっていた。これらの結果は,群れ外オスの攻撃がメスにとって脅威になっていたことを示している。加えて,群れを訪れる群れ外オスが多い日ほど,メスの休息時の凝集性が高まっていたことが分かった。この結果は,メスが群れ外オスから攻撃されるリスクに応じて凝集性を変化させていたことを示唆している。この傾向は調査期間中に群れへの出入りを繰り返していたαオス(山口・風張, 2020)が群れにいた日に不在の日よりも強くなった。また,αオスがいた日には不在の日よりもメスが群れ外オスに攻撃される頻度が顕著に低くなったことから,αオスの存在は群れ外オスの攻撃への抑止力になっており,メスたちは群れ外オスの攻撃に対抗するために休息時にαオスの周囲に凝集していたと考えられる。

  • 小田部 晃之
    原稿種別: 口頭発表
    p. 27
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/22
    会議録・要旨集 フリー

    嵐山ニホンザル集団の「石遊び」行動は、40年間断続的に研究が続けられているものの直近10年では行われていない。本研究では、全ての個体を識別した上で、「石遊び」行動をする個体名と「石遊び」行動のパターンを記録し、先行研究との比較によって「石遊び」行動の変化を検討することを目的とした。京都府京都市嵐山のニホンザル嵐山E群131頭を対象に2020年11月1日から2021年1月23日にかけて個体追跡サンプリングと行動サンプリングを行った。3つの結果が得られた。第一に、先行研究では全体の90%以上の個体に「石遊び」行動を確認しているが、本調査では全体の半分程度だった。とくに6〜13歳の個体にはほとんど「石遊び」行動が見られなかった。この年代は個体数が少ないため同年代間の伝播が抑制された結果である可能性がある。第二に、1979年から2008年には「石遊び」行動のパターン数が増加していたにも関わらず、本調査ではその数がやや減少していた。また、新しい行動パターンを5種観察した。全て0~1歳の個体によるものであり1~2度しか観察できなかったため単発的な行動と思われる。第三に、家系を順位ごとに三つのグループに分け、「石遊び」行動を行う個体数の割合を調べたところ、順位が低いほど「石遊び」行動の見られる個体の割合が多い事がわかった。オトナメス(5歳~)には、コドモ(0~4歳)と比較して、順位の低さと「石遊び」行動を行う個体数に、より強い相関が見られた。このことから高順位のコドモには同年代間の伝播が働いていることが推測される。本研究には、「石遊び」行動の少ない冬季に行ったこと、全個体を追跡できなかったこと、調査時間が先行研究の半分以下に留まることに問題がある。「石遊び」行動が見られなかった個体が本当に行なっていないのか、今回見られなかったパターンが本当に無くなっているのかについて、より詳細な追加調査が必要である。

  • 田村 大也, 井上 英治, 藤田 志歩, Akomo-Okoue Etienne François, Nkogue Chimène Nze ...
    原稿種別: 口頭発表
    p. 28
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/22
    会議録・要旨集 フリー

    ニシローランドゴリラにおける単雄複雌群の血縁構造は,父親である1頭の核オス,母親である複数のオトナメス,その遺伝的子供,の形を基本とする。しかし,いくつかの調査地では,核オスと未成熟個体が遺伝的父子ではない群れの存在が示唆されている。ガボン共和国ムカラバ-ドゥドゥ国立公園では,2016–2018年に,野生ニシローランドゴリラの単雄群が核オスの消失に伴い崩壊したことで社会変動が生じた。我々はこの社会変動の中で,崩壊した群れの残存個体による隣接群(N群)への移籍を捉え,変動後のN群の血縁構造を明らかにするためDNA解析を行った。変動前のN群は核オス1頭,オトナメス2頭,アカンボウ2頭の計5頭で構成されていたと遡及的に推測される。2018年3月,崩壊した隣接群(G群)から残存6個体がN群に移入した。さらに2018年9月,もう一つの隣接群(M群)から11個体がN群に移入したことが確認された。一方,同時期に2個体がN群から移出した。最終的に,オトナメス3頭,若いシルバーバック1頭,ブラックバック3頭,サブアダルト3頭,コドモ2頭,アカンボウ3頭がN群へ移入した。N群の個体数は,2018年3–8月の約6ヶ月間で5頭から20頭に急増した。変動後のN群を対象に,マイクロサテライト16遺伝子座に基づく親子判定を行った結果,N群の核オスの遺伝的子供は元々在籍していたアカンボウ2頭のみであった。 一方,移入してきた未成熟個体やブラックバック,若いシルバーバック計12頭の父親はG群またはM群の核オスと判定され,N群内に3頭の異父兄弟と2頭の完全孤児が確認された。また,血縁推定により3頭の核オスは互いに非血縁だと推定され,N群の核オスと移入個体の間に明確な血縁関係はないと考えられた。本研究は長期にわたる観察・遺伝的モニタリングによって,群れ崩壊に伴う残存個体の移籍の結果,核オスと未成熟個体が遺伝的父子関係にない群れが形成されることを示す明確な証拠を提供した。

  • 杉山 宗太郎, 今村 公紀, 糸井川 壮大, 吉村 崇, 今井 啓雄
    原稿種別: 口頭発表
    p. 28-29
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/22
    会議録・要旨集 フリー

    アカゲザルなどの一部のマカク類は10月から2月頃にかけて時期特異的に繁殖を行う。これまでの組織学的、内分泌学的な比較解析によって、マカク類では精巣サイズや精子形成の状態が 繁殖期と非繁殖期で 異なっていることがわかっている。しかし、サンプル取得の困難性もあり、年間を通した精子形成の連続的な動態は未解明である。また、季節性精子形成を制御する分子メカニズムは、霊長類では殆ど解明されていない。本研究では、屋外飼育のアカゲザルから精巣を定期採材する貴重な機会を得たため、これらのサンプルを用いて年間を通した精子形成動態を組織と遺伝子発現の両面から詳細に明らかにするために、2019年10月から2ヶ月おきに1年間、計6個体の野外飼育のアカゲザルから精巣を採材し、組織学的解析並びに精巣を構成する細胞や細胞周期に関わる遺伝子の発現動態解析を行った。解析の結果、精巣サイズは2 月で最大となり、精細管全体面積と内腔面積は異なった季節変動パターンを示すことが確認された。また、精子幹細胞のマーカー遺伝子や細胞周期制御因子の発現パターンから、精子幹細胞の増殖は10月で特異的に起こるのに対し、精子幹細胞の分化は繁殖期を通して持続的に行われていることが示唆された。加えて、精巣内で生殖細胞の増殖・分化の制御を担うセルトリ細胞に関連する遺伝子の発現動態から、生殖細胞の増殖・分化の制御に関わるいくつかの遺伝子発現に変動が見られた。この結果からセルトリ細胞の季節変動が季節性精子形成に大きく関与することが考えられる。本発表では、これらの結果を統合して見えてきた、季節性精子形成におけるセルトリ細胞の役割について議論したい。

  • 郷 康広, 辰本 将司, 石川 裕恵, 臼井 千夏, 渡邊 恵, 小賀 智文, 一戸 紀孝
    原稿種別: 口頭発表
    p. 29
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/22
    会議録・要旨集 フリー

    国立精神・神経医療研究センター・微細構造研究部において作出された自閉症様行動を示す胎生期バルプロ酸曝露マーモセットの脳を用いた遺伝子発現解析を行うことにより,霊長類疾患モデルとしてのマーモセット脳内における遺伝子動態を明らかにし,ヒト自閉症スペクトラムを含む発達障害の治療法の基盤となるトランスレータブル分子マーカーの開発を目指して研究を行った。胎生期バルプロ酸曝露マーモセット(VPAマーモセット)と定形発達マーモセット(UEマーモセット)を比較対象とし,最もシナプス形成が盛んな3ヶ月齢の2脳領域(内側前頭前野,前帯状皮質)を用いてシングル細胞核遺伝子発現解析を行った。各サンプルから1800~8000個のシングル細胞核データを回収し,1細胞核あたり平均3000~4000遺伝子の発現データを得た。取得した発現データをもとに,UMAP法による次元削減,グラフ法によるクラスタリングを行った。その結果,12種類の興奮性ニューロン,11種類の抑制性ニューロン,2種類のアストロサイトなど31の細胞サイプを同定した。同定した細胞タイプごとに,VPAマーモセットとUEマーモセットの発現比較を行った結果,VPAマーモセットの興奮性ニューロンでは発現低下,逆に抑制性ニューロンにおいて発現亢進が認められた。 このことは,興奮性・抑制性ニューロンの適切なバランスの乱れがヒト自閉症の要因の一旦として考えられている点と類似した現象を捉えていると考えらた。また,ヒト自閉症患者の死後脳から得られた先行研究との比較を行うことにより自閉症マーモセットモデルの有用性を検討した結果を報告予定である。

  • 本郷 峻, ゼファック ゼウンス, 南 倉輔, カムゲン トワ, ヴァーナウィ ラター, マスシ ジャック, 水野 佳緒里, 宮部 貴子, ...
    原稿種別: 口頭発表
    p. 29-30
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/22
    会議録・要旨集 フリー

    感染症は野生大型類人猿の重要な死因の一つと考えられており,また,ヒトとの共通感染症も数多く知られる。したがって,類人猿の感染症の把握は,彼らの保全だけでなく同所的に暮らす地域住民の健康のためにも重要である。私たちは,2019年12月から翌4月に行った広域での自動撮影カメラ調査によって,感染症罹患の可能性があるニシゴリラ (Gorilla gorilla) とチンパンジー (Pan troglodytes) を観察した。約3,400 km2の調査域内の214地点にカメラを設置し,のべ319個体のゴリラと216個体のチンパンジーを撮影した。そのうち,ゴリラ23個体 (7.2%) とチンパンジー7個体 (3.2%) の皮膚に異変を確認した。ゴリラでは,アカンボウ以外のすべての年齢カテゴリで,顔面,前腕,腋窩,下腿などに潰瘍や変形,結節,脱毛,拘縮がある個体が確認された。 一方,チンパンジーでは顔面の丘疹,四肢や臀部の脱毛や麻痺がみられた。一部,外傷の瘢痕の可能性を否定できない個体があるものの,感染症の罹患が強く疑われる個体も多く,それらは深部真菌感染症,水癌 (Noma),非結核性抗酸菌症,トレポネーマ症 (Yaws) などの発症が示唆された。また,異変のあるゴリラの映像を同地域に住む狩猟採集民バカに見てもらったところ,それはバカ語で「batakomba」という,ヒトも類人猿も罹患する病気である,という回答が得られた。ただし,異変個体の撮影地点は両種ともパッチ状に分布し,村落や農耕区に集中してはいなかったことから,ヒトと類人猿間の頻繁な相互感染は支持されなかった。今後,検体を採取して病名を確定するとともに,類人猿生息域全体でのデータ集約による,感染分布の把握が必要である。

  • 半谷 吾郎, Bernard Henry
    原稿種別: 口頭発表
    p. 31
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/22
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    異種の群れが一緒に移動する混群は,アジアの霊長類ではほとんど報告がない。混群がないことを定量的に示した研究は,唯一インドからのものがあるだけである。ボルネオ島,ダナムバレーの5種の昼行性霊長類(オランウータン,ボルネオテナガザル,レッドリーフモンキー,カニクイザル,ブタオザル)を対象にして,異種間の出会いについての資料を収集した。25か月間,9.9kmの調査路を繰り返し合計1544.3km歩くルートセンサスを行うとともに,レッドリーフモンキーの行動観察を行った。出会いの頻度と継続時間が,帰無仮説から予想される値と有意に異なっているかどうかを検討した。センサス中に373回霊長類を発見し,そのうち100メートルごとに区切った同じ区間の中で2種の霊長類を発見した事例は6回にすぎず,これは帰無仮説からの期待値と有意な差はなかった。レッドリーフモンキーの追跡中,テナガザルとの出会い頻度は帰無仮説の期待値より有意に低く,オランウータンとの出会い頻度は非結実期のみ帰無仮説の期待値より有意に高かった。出会いの継続時間は,追跡時間の6.4%にすぎず,オランウータンとの出会いのみ,継続時間が帰無仮説の期待値より有意に長かった。レッドリーフモンキーは,異種と出会う際に,遊動速度や移動の角度を変えなかった。レッドリーフモンキーとオランウータンが非結実期に一緒にいるのは,積極的に出会おうとしているのか,同じ食物パッチに独立に集まってきているのか,本研究の方法では区別ができない。 結論として,この霊長類群集には,積極的で長時間持続する混群は存在せず,いくつかの種の組み合わせで,互いに避けあっていることが確認された。

  • 佐藤 宏樹
    原稿種別: 口頭発表
    p. 31
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/22
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    被食動物散布型の大きな散布体をもつ植物は大型果実食者に種子散布を依存しているが,死亡率が高い実生定着段階における散布者の効果を検証した研究はまだ少ない。本発表ではマダガスカル北西部の熱帯乾燥林における最大の果実食者・チャイロキツネザル(Eulemur fulvus)だけに種子散布を依存する樹木2種(センダン科Astrotrichilia asterotrichaとウルシ科Abrahaia deflexa,以下AA およびAD)を対象に,落下もしくは散布された種子の状況を実験的に林内で再現し,散布後のキツネザルによる種子散布効果を考察する。母樹の樹冠下に果肉付きの散布体20 個を置いた50cm四方の区画(落下条件),母樹より20mおよび100m離れた地点に果肉を除去した散布体5個を置いた区画を2ヵ所ずつ設置した(短距離・長距離散布条件)。AA 10個体600個およびAD 8個体480個の散布体から発芽する実生を2年間記録した。散布体密度,母樹や同種結実木からの距離,実験区画上の林冠開空度を説明変数とし,実生の定着に与える影響を検証した。AAの散布体は保護構造が発達しており,発芽前の捕食はほとんどみられなかった。雨季に小型の地上子葉が展開すると多くの実生が食害で消失したが,林間開空度が大きい区画では定着率がわずかに高かった。一方,保護構造のないADの散布体は母樹下で深刻な食害を受けたが,結実木から離れ,低密度で散布体を設置した区画では急速に成長した実生が高い確率で定着した。 果実生産に対する持ち去り率(AA 59%,AD 26%)を考慮した実生定着率は,最初の雨季においてAD (6.5%)のほうがAA(1.5%)を上回った。AAはチャイロキツネザルに多くの種子を持ち去られ,その一部が光条件の良い場所に運ばれることで一定数の新規加入を実現していると考えられる。一方のADはキツネザルによる持ち去り率は低いものの,母樹からの逃避サポートを受けた少数の実生は高確率で定着できていると考えられる。

  • 辻 大和, 松原 幹, 白石 俊明, 澤田 研太
    原稿種別: 口頭発表
    p. 31-32
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/22
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    野生ニホンザル (Macaca fuscata) の糞に飛来する食糞性コガネムシ(以下糞虫)を,宮城県金華山島と鹿児島県屋久島で調査した。金華山で採集された糞虫類は11種(tunneller 9種、dweller 2種)で,特にオオセンチコガネ (Phelotrups auratus) ,フトカドエンマコガネ (Onthophagus fodiens),クロマルエンマコガネ (O. ater) が多かった。いっぽう屋久島で採集された糞虫類は8種(tunneller 7種、dweller 1種)で,カドマルエンマコガネ (O. lenzii),ヒメコエンマコガネ (Caccobius brevis),コツヤマグソコガネ (Aphodius maderi) が多かった。金華山で糞虫類の季節的な消長を調べたところ,10種は春から秋にかけて出現したが1種(トゲツヤクロマグソコガネ, A. superatratus)は春のみ出現が確認された。ニホンザルによる飲み込み型の種子散布は,夏と秋に頻繁に行われる。したがって,この時期に活発に活動する糞虫類によるサル糞の二次処理(移動・埋土)は,植物の発芽やその後の生育に影響する可能性がある。

  • 中川 尚史, 半沢 真帆, 澤田 晶子, 藤田 志歩, 田伏 良幸, 杉浦 秀樹
    原稿種別: 口頭発表
    p. 32
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/22
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    ニホンザルの抱擁行動は,ある個体群とない個体群があり,前者の間でも行動パタンに変異が認められることから,旧世界ザルとしては初めての社会的慣習であることが明らかとなった。屋久島西部個体群は,金華山島個体群と異なり体は揺すらない代わりに相手の毛を掴んだ掌の開閉運動を伴い,抱きつく方向も腹側のみならず体側から,あるいは背面から行われることが知られている(Nakagawa et al. 2015)。しかし社会的慣習ならば,同一個体群内においても群れによって抱擁行動の頻度やパタンに変異があったり,さらには抱擁行動のない群れがあることも予想される。本研究は,屋久島西部域に生息する複数のニホンザル群の観察を通じて,抱擁行動の頻度とパタンの群間変異を明らかにすることを目的に行った。調査は,2019年3月,8月,2020年3月,2021年3月の4度行った。原則終日群れ追跡し,抱擁行動が見られたら参与個体の性・年齢クラス,抱擁の方向(対面,体側,背面など)などを記録した。1日1時間以上,かつ合計30時間以上追跡できた7群を分析対象とすると,抱擁が観察されなかった群れはなかった。しかし,主な抱擁の参与者であるオトナメスの抱擁頻度が,群れのオトナメス数に関わらず極端に低い群れが認められた。抱擁の方向については,Nakagawa et al.(2015)が報告している3方向以外の型が確認され,こうした方向の多様性はオトナメスの抱擁頻度が高い群れで認められる傾向があった。他方,未成熟個体の抱擁の方向は概ね対面型であり,オトナメスの抱擁に比べ多様性が低かった。以上のことから抱擁は,成長につれて多様な方向からの抱擁を学習していることが示唆されるものの,群れによっては主たる参与者であるオトナメスが抱擁をほとんどしないと群れ内に伝播していかないと考えられた。また,金華山島の抱擁と異なり回数は少ないながらオトナオスの抱擁も観察され,西部個体群内の群れ間伝播に寄与しているものと推察された。

  • 徳山 奈帆子
    原稿種別: 口頭発表
    p. 32
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/22
    会議録・要旨集 フリー

    集団性動物の多くにおいて,親和的行動は他集団より自集団の個体に向けられる「内集団ひいき」が知られている。ボノボの集団間関係は比較的寛容かつ親和的で,ある程度の集団間競合関係があるものの,集団間の親和的・性的交渉も観察される。ボノボは他集団個体と積極的に親和的・性的交渉を行う「よそ者好き」なのだろうか?それとも,他集団との親和的交渉が可能であっても,傾向としては「内集団ひいき」なのだろうか?本研究では,集団の出会いの際のボノボの親和的・性的交渉相手の選択を検討した。コンゴ民主共和国・ワンバにおいて, 野生ボノボPE集団のパーティを追跡し,毛づくろい,交尾,ホカホカ(メス同士の性的社会交渉)を全生起法で記録した。パーティ内のPE集団と他集団個体の数から他集団個体との各交渉の生起頻度の期待値を算出し,観察値と比較した。メスは自集団メスよりも他集団のメスを毛づくろい相手に選択していた。ホカホカについても,他集団のメスを選択する傾向にあった。しかし,メスは自集団のオスよりも他集団のオスと毛づくろい・交尾を行う傾向は見られなかった。オスについては,他集団の個体(オス・メス)を自集団の個体よりも毛づくろい相手に選択する傾向はみられなかった一方で,交尾相手には他集団のメスをより選択していた。これらの結果から,メスには「よそ者好き」傾向があることが分かった。メスは他集団のメスとの親和的ネットワークを広げることで,協力相手や息子の繁殖相手を増やすなどの利益を得るのかもしれない。先行研究において異なる集団のオス同士は親和的交渉を避けるとされていたが、本研究では、オスにおいても「内集団ひいき」の傾向はみられなかった。 オスは他集団のメスと積極的に交尾を行ったことから、集団の出会いはオスにとって繁殖相手を増やすという利益があるのかもしれない。

  • 橋本 千絵, リュ フンジン, 毛利 恵子, 清水 慶子, 坂巻 哲也, 古市 剛史
    原稿種別: 口頭発表
    p. 33
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/22
    会議録・要旨集 フリー

    実効性比(operational sex ratio: OSR)に偏りがあるとき,繁殖機会を巡って競争が起きる。出産間隔が長く,非季節性の繁殖を行うチンパンジーでは,OSRは極端にオスに偏っており,これがオスの激しい攻撃行動につながっていると考えられている。一方,チンパンジーと同属のボノボでは,出産間隔などはチンパンジーとほとんど変わらないが,産後の不妊期に発情再開することでOSRが低下し,集団内および集団間でのオスの攻撃的な競争行動は少ない。本研究では,コンゴ民主共和国のワンバの野生のボノボのメスを対象に,産後の不妊期間中の性皮最大腫脹(MS)の再開と交尾,尿中のエストロゲン代謝産物濃度(E1C)の変化について分析を行った。その結果,MSの日数割合と交尾回数は,産後不妊の初期段階から着実に増加し,MSの日数割合は次の妊娠まで増加し続け,交尾回数は産後約42〜48カ月で最高レベルに達した。また,MS中のE1C濃度も早い時期から増加し,出産後約42~48カ月で最高レベルに達した。 これらの結果から,ボノボのメスは,通常は出産後 49.7カ月まで妊娠しないが,授乳期の早い段階でE1C濃度が低い状態で性皮最大腫脹と発情を再開することが示唆された。

  • 清野 未恵子, 鈴木 克哉, 清野 紘典
    原稿種別: 口頭発表
    p. 33
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/22
    会議録・要旨集 フリー

    人々の住環境を利用するニホンザル群(以下,加害群)の被害管理及び保全には,当該地域に生息する群れ数と遊動域等の分布情報がまず必要になる.遊動域は,直接観察かGPSを用いて特定することができるが,どちらも労力と時間を必要とする.直接観察を用いた遊動域推定は,熟達した研究者が行うことが前提となってきたが,保全管理が必要な地域に必ずしも熟達した研究者がいるわけではない.現在,ニホンザル群のおおまかな分布情報は出没カレンダー等を用いて明らかになってきているが,より正確な群れの遊動情報を収集・蓄積する方法論の開発が各地域個体群の保全を考える上で急務である.そこで本研究では,2010年からサル監視員を雇用し加害群の分布調査を行なってきた兵庫県丹波篠山市の事例に着目する.サル監視員とGPSによる調査を行っていたニホンザルC 群を対象に,サル監視員とGPSのデータを用いた遊動域推定を比較し,遊動域の差がより少ない観察点数を算出した.これらの結果をふまえて,加害群の遊動域推定手法を考察する.サル監視員のように被害対策のために追い払いやパトロールを行う人員は各地で雇用されているが,群れの位置情報を記録していない場合も多い.現場人員が位置情報を記録し,遊動情報をオープン・シェア化することで,ニホンザルの地域個体群の保全に資するデータとなることが期待される.

  • 森光 由樹
    原稿種別: 口頭発表
    p. 33-34
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/22
    会議録・要旨集 フリー

    房総半島に生息している外来種アカゲザルの根絶に向けて,千葉県は2005年より捕獲を実施している。外来種根絶で重要な情報は,完全排除を証明することであるが,それには5〜10年間,生息情報無いことが必要である。根絶を証明するためには,多くの時間と現地踏査が必要であり労力がかかる。そこで報告者は,2021年2月8日,千葉県南房総に生息しているアカゲザル(ウルシ群)に,超小型ビデオカメラ(GPS電波発信器付)を装着し,アカゲザルおよび交雑個体を含む群れの生息状況を把握する手法について検討した。使用したGPS首輪は(GLT-02,サーキットデザイン)を用いた。ビデオは市販のカメラ(CHOBi CAM Pro, Japan Trust Technology)を改造した。マイコンPeripheral Interface Controller(PIC)を利用して撮影スケジュール設定を行った。スケジュールは,朝7時から17時まで10分の休止時間をおいて1撮影30秒間撮影を実施した。1日の撮影回数は54回,合計27分間に設定した。アカゲザル成獣に機材装着させた後,放獣し約4週間後,機材をドロップオフ装置にて脱落させ,機材の回収を行った。動画解析により,サル(群れ)が映っていないか画像データの精査を行った。その結果,動画成功時間は,10日間,(222分30秒)で,アカゲザルまたは交雑個体が画像に最大3頭確認することができた。画像解析から,各個体の尾の長さ,性年齢区分で個体識別すると少なくとも7頭生息していることを確認することができた。開発中の首輪型ビデオ装置は,アカゲザル・交雑個体の生息状況を把握する方法として活用できる可能性がある。 また将来,地域からアカゲザルの群れの根絶を検討するためのモニタリングの資料になると考えられた。

  • 白井 啓, 高野 彩子, 鳥居 春己, 萩原 光, 川村 輝, 清野 紘典, 岡野 美佐夫, 杉浦 義文, 川本 芳, ほか 和歌山タイワン ...
    原稿種別: 口頭発表
    p. 34
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/22
    会議録・要旨集 フリー

    ニホンザルにおいて群れの分裂は各地で確認されているが群れの合流はほぼ報告がなく,メスの群れからの離脱や他群への加入は,報告はあるが普通は生涯出自群を離脱しないと言われている。ニホンザルとその近縁種タイワンザルあるいはアカゲザルとの2つの交雑個体群で群れの合流,メスの群れからの離脱及び他群への加入が確認されたので報告する。 1999-2013年和歌山県北部に野生化していたタイワンザル個体群(最大4群,2004年),2005-2017年千葉県南端に野生化しているアカゲザル個体群(最大17群確認,2016年)において電波発信器あるいはGPS首輪を群れ毎に1-10数頭のメスに装着し群れの位置及び群れの分派,分裂をできる限り把握した(和歌山県・千葉県・環境省事業含む)。和歌山では自動撮影カメラ等で未知の群れの有無を把握し,千葉では発信器未装着群を確認したら記録した。和歌山) 群れ数は1999年調査開始当初2群(計170-200頭) で,捕獲により個体数は減少したがそれぞれ分裂し 2004年に4群(計50-80頭)となり,1群が消滅し3群になった後,群れの合流が2回あり最後は1群となった。群れの合流は2群のGPS首輪装着個体の個体間距離が同一群であると判断できる程度になり継続したことで判断した。最初の合流は平均27m,2回目の合流は平均59mであった。発信器装着のオトナメスが群れを離脱し単独行動し別群に加入したことも確認した。千葉)2006-2017年の間に群れの分裂を10回,群れの合流を3回確認した。メスの群れからの離脱と単独行動あるいは分派行動の後,別群に加入したことも確認した。個体数増加,食物不足,捕獲によって群れのまとまりが不安定になり分派や分裂が起きることがあるが,群れの合流,メスの群れからの離脱や他群への加入は,平常時に発揮されることは稀でも,大量捕獲,食物不足や感染症などによってサルの社会情勢が不安定~緊急事態に陥った時に安定を求める手段として発揮される習性と考える。

  • 川本 芳, 葦田 恵美子, 金城 芳典, 谷地森 秀二, 宮本 大右
    原稿種別: 口頭発表
    p. 34-35
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/22
    会議録・要旨集 フリー

    (目的)第30回大会でmtDNA分析から四国のニホンザルの系統地理を報告した。この間に, 過疎化とともにサルの分布は拡大し農業被害が増加した。行政は管理と対策を迫られ, 調査しながら個体数調整を中心に群管理を進めている。一方で, サルに関する基礎情報は依然不 十分で, 研究は遅れている。今回は追加試料により前回得た結果を確認・検討することを目的に行った研究を報告する。(方法)高知県と徳島県の7市町村のサル生息地で糞42試料を採取し分析した。Lysis Bufferに保存した糞スメアから試料を調製し, PCR産物からmtDNA非コード領域のほぼ全配列をダイレクトシーケンシング法で決定した。クラスタリング解析とネットワーク解析を行い, 既知配列と比べてmtDNAハプログループを分類し, 四国内外の構造と進化的関係を評価した。(結果)解読に成功した28データを加えて解析を行い以下の結果を得た。①四国のサルが単系統であることを確認した。②四国外では岡山県臥牛山に近縁タイプを検出しているがこれ以外に四国に類するタイプは発見できなかった。③四国内部は東西の2グループに大別できることを確認した。今回の追加試料により讃岐山脈と淡路島が東グループ内で他から大きく分化すること, 臥牛山タイプがこの外縁に位置することを明らかにした。④mtDNAから四国と周辺地域の関係を見ると屋久島は九州より四国へ近縁性を示した。(考察)日本で四国のサルは早い時期に成立した系統と考えられる。古くに成立しながら四国は単系統であり, 周辺では臥牛山以外に近縁タイプがみつからないことから, 瀬戸内海の陸化にもかかわらず周辺から母系には影響を受けなかったことが予想できる。島内に東西分化が認められ, さらに今回の結果では讃岐山脈の分化が注目に値する。単系的に成立した個体群が示す島内分化の原因を個体群や環境の変化と関係付けて理解することが今後の課題である。

ポスター発表
  • 矢野 航, 荻原 直道
    原稿種別: ポスター発表
    p. 36
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/22
    会議録・要旨集 フリー

    頭蓋骨同士が可動性を残していることは分娩時の産道通過において重要である。ヒトは胎児の脳の大きさと母親の産道の狭さの関係が不均衡であることから、頭蓋骨の大泉門と小泉門および、これに連続する各縫合が開存していることはヒトの独自性として挙げられてきた。しかし、実際にヒト以外の霊長類における周産期の頭蓋骨縫合部の開閉状況のデータは、胎児や周産期の資料が少ないことから明らかでない。 発表者らこれまでの分析でニホンザルでも分娩時に頭蓋骨に開存が存在しているが、泉門や縫合閉鎖の順がヒトと異なることが示されている。また、霊長類の各系統が持つ固有の頭蓋骨形状が、胎児期にすでに形成されていることも分かっている。そこで本研究では周産期の閉鎖状況が、頭蓋骨の形態形成に与える影響を解析した。ニホンモンキーセンター所蔵の48体の標本をマイクロCTと医療用CTでスキャンし、頭蓋骨全体の発達変化はサイズを保持した幾何学的形態測定法で計測した。頭蓋骨の閉鎖過程を開存部面積を計算し、発達的変化として定量化した。 また前頭骨、頭頂骨、後頭骨鱗部それぞれの発達変化をサイズを保持した幾何学的形態測定法によって導出した。また歯牙の石灰化度合いを相対年齢の指標とした。周産期における頭蓋骨全体の発達傾向に開存状況、頭蓋骨の形成、相対年齢が与える影響を回帰分析で導出した。また、ヒトと非ヒト霊長類との間の分娩における解剖生理学的な相違が環境要因として胎児の頭蓋骨形態形成に与える影響を考察した。

  • ―棘突起に着目して―
    菊池 泰弘, 荻原 直道
    原稿種別: ポスター発表
    p. 36
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/22
    会議録・要旨集 フリー

    様々な移動運動様式を示す霊長類における胸椎は, 移動の際に生じる力学的ストレスやエネルギー効率,さらには採食時の姿勢を維持し体幹を安定させるために,バリエーションに富んだ形態を示すと考えられる。特に,棘突起は上肢筋である,僧帽筋や菱形筋が付着し,その影響を受けやすいと推測される。そこで本研究では,上位胸椎の棘突起に特に着目し,種間差の抽出を試みた。ゴリラ,オランウータン,テングザル,チンパンジー,シアマン,アヌビスヒヒ,パタスモンキー,ハヌマンラングール,ホエザル,クモザルにおける第3~6胸椎,合計67標を対象にCT撮像を行った。得られたデータを16bit-tiffデータに変換し3Dソフトを用いて三次元再構築を行った。3Dデータ上で各霊長類種における解剖学的相同点とそれらの中間点,合計104点を決定した。その後Procrustes解析によるサイズの正規化および位置合わせ後,座標(シェープ)を主成分分析で解析した。 その結果,棘突起形状は,長さや棘突起先端形状,さらには厚みが,樹上性と地上性の霊長類で大きく異なる傾向を示した。特に,ぶらさがりのオランウータンやブラキエーションのシアマンにおいて,棘突起が椎体サイズ比で短く尾側に傾斜し,その先端が大きく,また根部も厚い傾向を示した。アジア生息の類人猿における上位胸椎では,支持基体に対してぶらさがる行動に関連した機能的要求が棘突起形状に表れている可能性が示唆された。本研究はJSPS科研費20K06835,京都大学霊長類研究所・共同利用研究2020-B-4の助成を受けたものです。

  • 櫻屋 透真, 江村 健児, 薗村 貴弘, 平崎 鋭矢, 荒川 高光
    原稿種別: ポスター発表
    p. 36-37
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/22
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    ヒトのヒラメ筋は前面に羽状筋部を持ち腓骨頭から腱弓を介して脛骨のヒラメ筋線に及ぶ幅広い起始部を持つのに対して,ヒトを除く霊長類全般では前面の羽状筋部が存在せず,腓骨頭のみから起始していることから,ヒトの直立二足歩行への適応を語る上でヒラメ筋の羽状筋部が大きな意味をもつことが示唆されてきた。また筋の発生を考える上で極めて重要な支配神経に着目すると,ヒトのヒラメ筋では後面への枝 (Posterior branch; PB) とは別の,前面の羽状筋部へ進入する枝 (Anterior branch; AB) を有している。我々はこれまでヒラメ筋の支配神経を霊長類種間で比較してきた中で,ヒラメ筋のPBとABは由来が異なる可能性があること,ABはヒトから系統的に離れた霊長類種と,ヒトに近い類人猿に現存することを明らかにしたが,羽状筋部を持たない類人猿のABがどのようにヒラメ筋内に分布するのか詳細は分かっていなかった。そこで,先行研究でAB相当の枝を認めたテナガザルとヒトのヒラメ筋支配神経の筋内分布を詳細に解析し,ヒトと他の霊長類のヒラメ筋の成り立ちの考察を試みた。ヒト1体1側,フクロテナガザル1体2側のヒラメ筋支配神経の筋内分布を,実体顕微鏡を用いてデジタル画像とスケッチにて記録し,Sekiya (1991) の分類に基づき各枝を分類した。ヒトとフクロテナガザル全例においてPBは先行研究と同様に5種類の枝に分類された。また,ヒトのABは,PBと交通しながらも,PBから独立して羽状筋部を支配するのに対し,テナガザルのABは独立した支配領域を持たなかった。今回の所見から,ヒトのABは進化の過程でPBと混ざってヒラメ筋を支配し始め,ヒトで直立二足歩行を獲得する段階でABの支配領域を拡大し羽状筋部を形成するに至ったと考えたい。一方,フクロテナガザルのABの現存は,ヒトのABが再獲得される初期段階を示すものか,フクロテナガザルで単に遺残したものかは今後検討する必要がある。

  • 江村 健児, 平崎 鋭矢, 荒川 高光
    原稿種別: ポスター発表
    p. 37
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/22
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    霊長類において,浅指屈筋の筋束構成は種間で異なるが,その支配神経パターンには一定の共通性が見られる(Emura et al., 2020)。本研究では,類人猿系統発生における浅指屈筋の形態学的な変化を明らかとするため,昨年報告したニシローランドゴリラに続いて,ニシチンパンジーの浅指屈筋における筋束構成と支配神経パターンを調査した。ニシチンパンジー成体オス1頭の右浅指屈筋を用い,浅指屈筋の起始,停止,筋束構成,支配神経を肉眼的に観察した。 所見をスケッチとデジタル画像で記録した後,支配神経とともに一括して摘出し,実体顕微鏡下で支配神経の筋内分布を観察,記録した。標本は京都大学霊長類研究所共同利用・共同研究及び大型類人猿情報ネットワーク(GAIN)を通じて提供を受けた。浅指屈筋は主に内側上顆から起始し,第2指から第5指へ停止腱を送った。第2指への筋腹が中間腱を持ち,他の筋腹よりも明らかに深層に位置すること,第3指への筋腹が内側上顆に加えて橈骨からも広く起始すること,第5指への筋腹が内側上顆に加え尺側手根屈筋の筋膜からも起始することがニシローランドゴリラの浅指屈筋と類似していた。第2指への遠位筋腹には正中神経の遠位からの枝が入るが,近位筋腹は正中神経近位からの枝と尺骨神経の枝に二重支配を受けた。これはヒトでの変異例(Ohtani, 1979; 山田,1986)と類似しており興味深い。第3指筋腹に正中神経近位からの枝が入り,その一部が第4指筋腹に達し,さらに伸びて第5指筋腹を支配するという所見は,他の霊長類の特徴(Emura et al., 2020)と同様であった。 ヒト浅指屈筋の第5指筋腹は第2指の中間腱から起始するとされ(Ohtani, 1979; 山田,1986),類人猿とは異なる。ヒトにおける第5指筋腹の起始の変化はチンパンジーと系統上分かれた後に起きたものであるという可能性を考えたい。

  • 藤野 健
    原稿種別: ポスター発表
    p. 37-38
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/22
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    【はじめに】飼育下のアカアシドゥクラングールPygathrix nemaeusの1個体にて後肢屈曲型の腕渡りを観察したので報告する。【材料と方法】横浜ズーラシアにて飼育される妊娠中の雌個体。運動性に問題は見られない。2019 年11月18日にフルHD,60 frames/sで撮影後,コマ割りして目視にて運動性状を解析した。過去撮影のシロテテナガザル,ゴリラ(子供個体),ケナガクモザル,キンシコウ(子供個体)の腕渡り動作像と比較した。【観察】座位から前肢を伸ばしてすぐ上の飼育ケージ天面を把握して腕渡りを開始し,後肢を完全に屈したまま体幹と一体化させて腕渡りを続け,他方,勢いを付けて天面にぶら下がり腕渡りする際には一度後肢を伸展後に完全に屈するか或いは中程度の屈曲を保つ。いずれも骨盤と胸郭の間の回転位相差は外見的には感知されない。【考察1】他個体は後肢を伸展し下垂させて進み同じく位相差は生じない。大型類人猿やヒトの腕渡り動作時もこれに等しく,新世界ザルのクモザルも尻尾を併用するが類似した動作を行う。これに対し,小型類人猿のシロテテナガザルでは,高速な腕渡り時には後肢を屈し,この時,前肢を前方に伸ばして胸郭の側方を左右交互に突き出すが,骨盤は逆回転して後肢の膝頭を大方前方に向けたままで進む。【考察2】腕渡りを行う霊長類は基本的に(掴まり立ち)二足歩行を行い,その際このラングールを含め胸郭と骨盤間の回転位相差が観察されるが,腕渡り時にはこれは観察されない。これから,位相差の発生は,立位のぶら下がりロコモーション即ち腕渡りとペアで開始された立位歩行の初期段階に於いて,掴まり立ち歩行動作に伴うものとして獲得され,また二足歩行の効率性に資するものとなったと考える。そしてこの運動習性が小型類人猿の高速腕渡りに取り入れられその効率性を高めたものと考えるが,本ラングールの後肢屈曲姿勢は膨らんだ腹部の保護或いはその状態での腕渡りの効率化に向けたものである可能性がある。

  • 杉山 茂, 赤見 理恵, 鏡味 芳宏, 星野 智紀, 北原 愛子, 森村 成樹, 伊谷 原一
    原稿種別: ポスター発表
    p. 38
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/22
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    新潟県妙高市の笹ヶ峰地域は標高約1,300mの山地帯に位置し、11月から5月という長い期間、積雪のため交通が閉ざされる。1928年から京大山岳部が山小屋を運営しているが、付近でニホンザル(以下、サル)が観察されたという記録はなかった。しかし1980年頃から釣人による目撃例が聞かれ、2002年8月以降は京大山岳部関係者などによる無雪期の観察例が相次ぐようになった。2019年3月には京大と日本モンキーセンターの合同チームが積雪期にもサルの群れを確認した。第二期新潟県ニホンザル管理計画(新潟県, 2017)によると、当該地域周辺には妙高個体群として3群111~150頭が生息する。しかしその遊動域は主に笹ヶ峰よりも高度が低い人里に近接した地域であり、笹ヶ峰で観察されたサルはこれらとは異なる群れである可能性が高い。近年笹ヶ峰では草地や湿地が減少し、笹ヶ峰牧場の放牧地の囲い柵と放牧頭数の減少もあり、森林化が進みつつある。そこで本研究では、笹ヶ峰のサルの生息状況を明らかにし、今後も継続可能なサルを含む中大型哺乳類の分布や植生分布のモニタリングの道筋をつくることを目的に、2020年1月よりトヨタ環境活動助成プログラムの支援を得て調査を開始した。調査方法は目視、食痕やフンなどの痕跡、センサーカメラのほか、積雪期の調査ではドローン(Mavic2Pro)を活用した。積雪期には広葉樹が落葉し、上空からでもサルを発見しやすい。ドローンが対地高度130m程度で静止した状態では、サルはドローンを気にすることなく活動し、個体数をカウントすることができた。また天候等の条件にもよるが、対地高度50~60m程度でも足跡を確認できることもわかった。これらの調査の結果を総合すると、笹ヶ峰には現在、妙高個体群とは別に20~30頭程度の群れが2群以上生息していると推定された。今後は個体識別可能な個体の発見や群れ構成の把握をすすめ、群れの同定をおこない、生息状況を明らかにしていきたい。

  • 小川 秀司, Paudel Pavan K., Khatiwada Sunil, Koirala Sabina, Chalise Mukes ...
    原稿種別: ポスター発表
    p. 38-39
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/22
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    ネパールのカトマンズ近郊(北緯27.8度, 東経85.4度)にはアッサムモンキー(Macaca assamensis)とアカゲザル(M. mulatta)が生息している。2013年から 2017年にセンサスを行って,発見した群れの構成を記録した。アカゲザルは,カトマンズ周辺に広がる山地の森林のみならず,Swayambhunath寺院,Pashupatinath寺院,Balaju庭園内とそれらに隣接する森林,さらには耕作地や街中でも発見された。農作物や残飯を全く食べていないアカゲザルの群れは見つからなかった。オスグループ及びソリタリーのオスは,アカゲザルでは発見されたが,アッサムモンキーでは発見されなかった。Shivapuri Nagarjun国立公園内とその周辺地域では,アッサムモンキーの群れは11群,アカゲザルの群れは5群発見された。 群れを発見した場所の平均高度は,アッサムモンキーが1,546mでアカゲザルが1,507mだった。性年齢構成を確認できた複雄複雌群についてアッサムモンキーの6群とアカゲザルの5群を比較すると,群れの平均頭数は,アッサムモンキーが21.2頭でアカゲザルが29.6頭だった。成熟個体の性比(オトナオス÷ オトナメス×100)の平均は,完全な成熟個体のみではアッサムモンキーが69.5でアカゲザルが56.0,サブアダルトのオスを含むとアッサムモンキーが74.9でアカゲザルが69.2だった。群れの全頭数に対するオトナの割合の平均は,アッサムモンキーが53.8% でアカゲザルが42.6%だった。上記の数値はいずれも有意な差ではなかったが,アカゲザルと比べてアッサムモンキーは,小さな群れを形成し,オスがオスグループやソリタリーとして暮らさないために複雄複雌群内のオトナオスの割合が高く,成熟個体の割合が高く,高地に生息する傾向が伺えた。アッサムモンキーは攪乱された小さな二次林ではなく険しい地形の森林でゆっくり繁殖する可能性があり,それがこうした特徴と関係していたのかもしれない。

  • 吉川 翠, 小川 秀司, 小金澤 正昭, 伊谷 原一
    原稿種別: ポスター発表
    p. 39
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/22
    会議録・要旨集 フリー

    タンザニアの疎開林地帯のウガラ地域(05°13′S, 30°28′E)で,チンパンジー(Pan troglodytes)の採食物量(果実量)の季節変化と,チンパンジーのパーティサイズについて分析をおこなった。ウガラ地域は,チンパンジーの生息域の中で最も乾燥した地域の1つで,疎開林が80%以上を占め,他には川辺林と草地が存在する。本研究ではフェノロジー調査で収集した各季節の採食可能な果実の量,直接観察の調査で収集したチンパンジーのパーティサイズ,糞分析で収集したチンパンジーの採食品目といったデータを利用して分析をした。樹上果実量の季節変化のデータは,ベルトトランセクト(長さ10km 幅4m)を設けて植生調査をした後に,2010年9月から2週間に一度,各樹木の樹上果実量と果実の色を1年間に渡り記録した。樹上果実量の比率は,樹上に最も多く結実した状態を100%として,100%,80%,60%,40%,20%,0%に分類した。この果実量の比率と胸高直径断面積の値をもちいて,季節ごとに樹上の採食可能な果実量を算出した。また,草本の果実のAframomum ala の結実数と色による成熟果実の季節変化を調査した。その結果,樹上果実量は雨季に比べて乾季で有意に高かった。草本の果実は,雨季前半は結実数が少なく未成熟だったが,乾季には成熟果実の割合が半数以上を占めた。糞中に占める葉や茎などの植物の繊維質の出現割合は,雨季に高く,乾季には少なかった。チンパンジーのパーティサイズと,チンパンジーの糞中に占める繊維質の割合には負の相関があった。また,チンパンジーのパーティサイズと果実量には正の相関があった。以上のことより,雨季には果実が少なく,この時期にチンパンジーは,植物の繊維質をよく採食しており,またパーティサイズを小さくすることで採食競合を避けて,疎開林地帯に適応していると考えられた。

  • 半沢 真帆
    原稿種別: ポスター発表
    p. 39-40
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/22
    会議録・要旨集 フリー

    多くの霊長類では,群間エンカウンターで他群個体との交渉が起こるが,その敵対性や親和性は同種内,同一群内でも違いがあることが指摘されている。また,交渉への積極性も個体によって異なる一方で,個体ごとのエンカウンターへの参加率を定量的に示した研究は少ない。本研究は2018年,2019年の8月から10月の間,屋久島のニホンザル1群を終日追跡し,隣接する7群とオスグループとのエンカウンター時における群間交渉を観察した。各個体の参加率は,他群個体と10m以下の距離で最も近くにいる群内個体から後方5mの範囲を前線とし,エンカウンター中に前線にいる時間割合を用いて求めた。また,各ダイアッドの共に前線にいる割合と各個体の交渉割合を算出した。81回のエンカウンターのうち,他群と敵対的,親和的交渉が両方あったのは42回あり,どちらの交渉も時間が経過するほど生起確率が低下した。また,参加率は低順位オスとワカオスで高く,共に参加することが多いほか,低順位オスは高順位オスやオトナメスとも参加した。ワカオスはオトナに比べ,親和的交渉割合が高かった。一方,第一位オスや高順位メスの参加率は低いが,共に参加することが多く,敵対的交渉割合が高かった。以上の結果から,屋久島のニホンザルの他群との敵対的,親和的交渉は,他群を視覚的に認識した出会い頭に多く起こるが,長く続くエンカウンターでは次第に積極的な交渉が減り,非敵対的に終了している可能性が示唆された。また,一回のエンカウンターのなかに敵対的,親和的交渉が入り交じっており,敵対的な状況になると,第一位オスが親密な関係にある高順位メスを伴って参加すると考えられた。低順位オスは,普段は近接できない高順位オスやオトナメスと,他群と対峙したエンカウンターの場面で共に参加することで群内の協力性を高めている可能性があり,ワカオスは,将来移籍する可能性のある他群に親和性も見せることで関係を深めていると推察された。

  • 豊田 有, 丸橋 珠樹, マライヴィジットノン スチンダ, 荒井 迅, 香田 啓貴, 松田 一希
    原稿種別: ポスター発表
    p. 40
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/22
    会議録・要旨集 フリー

    動物の社会組織の潜在的な構造を推論することは,動物生態学の重要課題である。普段は3次元的空間配置の中で暮らしている動物において,林床の遊動時や道路・森林ギャップ間を通過する際などに,それが一列に並ぶ配列になることがある。この隊列構造は,社会構成員の社会的関係を反映する特徴的な空間形成であり,隊列の順序を解析することはその種が持つ社会構造を理解する鍵となる。本研究では,野生のベニガオザル集団の隊列移動における通過順序のパターンを,自動撮影カメラの映像データから分析し,社会集団構造の復元を試みた。通過順序から状態遷移を解析した結果,アカンボウを連れた母親がオトナオスの後をついてくる,若いオス個体がオトナオスの後をついてくる,隊列の末尾はオトナオスである,といった規則性が見られ,特にオトナオスの順序位置に特徴が認められた。隊列順序から推定した集団構造と,過去の行動データとを照らし合わせた結果,交尾独占度の高いオスはメスと一緒に,交尾独占度の低いオスはメスから隔離されたまとまり構造として分類されていた。これらの結果から,ベニガオザルは社会的関係性に依存した規則的なパターンで遊動していること,それは特にオトナオスの空間的な位置関係に反映されていることが明らかとなった。

  • 大橋 篤
    原稿種別: ポスター発表
    p. 40
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/22
    会議録・要旨集 フリー

    霊長類の社会には種内変異があると考えられている。 ニホンザル(Macaca fuscata)の種内変異の研究については、餌付け群同士の比較にはじまり、餌付け群と野生群の比較から、環境の異なる野生群同士の比較へと進んできた。そうした中で群れサイズが小さく社会性比(SSR:オトナメス1個体あたりのオトナオスの数)が高い屋久島のヤクシマザル(M. fuscata yakui)の群れでは、オス間のグルーミング頻度がホンドニホンザル(M. fuscata fuscata)野生群の金華山の群れよりも高いことがわかった。しかし、地域間の比較では遺伝的要因や生態学的要因は排除しきれていない。一方、屋久島西部の中にも群れサイズが大きく社会性比が低い、金華山的な特徴を持った群れが存在する。本研究では、2020年11月から2021年3月の間、屋久島西部において、群れサイズと社会性比が大きく異なるソラ群とリク群のオトナオスを終日追跡し、オス間の交渉及びオス-メス間の交渉を記録した。遊動域が隣接する2群を直接比較することで、遺伝的要因と生態学的要因の影響を最小限にしたうえで、群れサイズとSSRがオス間の交渉に及ぼす影響、及びその決定要因を明らかにすることを目的とする。分析の結果、群れサイズが大きくSSRが低いソラ群ではオス間の親和的交渉頻度は低く、攻撃的交渉頻度は高くなった。また、高順位オスから低順位オスへのサプランティング頻度は高くなった。 これらの結果は、屋久島内であっても、群れサイズが小さくSSRが高い群れでは、オス同士が結束して周囲の群れオスから発情メスを守る必要があるため、協力関係を維持するために親和的交渉頻度が高く、さらに低順位オスからの支援を引き出すために群内での高順位から低順位に向けた攻撃的交渉頻度が低くなる傾向があることを示唆している。また、オスの社会関係は遺伝的要因や生態学的要因によらず変化する可能性が示唆された。

  • 石塚 真太郎
    原稿種別: ポスター発表
    p. 41
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/22
    会議録・要旨集 フリー

    アロマザリング行動は、霊長類で広く見られる。これまでに様々なアロマザリング行動のレパートリーや、養母となる個体の特徴が報告されてきたものの、アロマザリング行動を引き起こす社会的・生理的要因については、未だに不明である。本発表では、ニホンザルのメスによる綿密なアロマザリング行動2 事例の詳細について報告する。2事例は異なる個体群で観察され、運搬、毛づくろい、授乳などの養育行動が観察された。2事例のアロマザリング行動は、養母の出産の20日あるいは29日前に開始し、最大84日間継続した。本研究では、ニホンザルのメスがアロマザリング行動として授乳を行うこと、出産直前の個体が養母になり得ることが初めて示された。これらの行動が生起した要因としては、餌付けによって養母の栄養状態が良好であったこと、出産直前であるため養母の養育行動関連ホルモンの濃度が上昇していたこと、養子の生物学的母親が消失していた可能性が考えられる。本事例は、霊長類のアロマザリング行動が生起する背景を理解する上で重要である。

  • 中道 正之
    原稿種別: ポスター発表
    p. 41
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/22
    会議録・要旨集 フリー

    高齢メスの行動特徴として社会的関わりの減衰、あるいは社会的孤立傾向が、マカク属のサル類で報告されている。しかし、勝山ニホンザル集団のα(第1位)メスは、30歳を超える超高齢であるにもかかわらず他個体との近接や毛づくろいの頻度は全く低下しなかった。このメス(正式名称:Bera53’71、通称Pet)は、16歳の時にαメスだった母ザルの死亡でαメスとなり、32歳で集団からいなくなるまで(死亡と推測)、αメスであり続けた。周囲5m以内に他の個体が一頭もいない「単独」の生起率(20分毎に記録)は、24歳から29歳までのメスでは35%から50%であるのに対して(Nakamichi, 1984)、Petが28歳、 31歳、32歳の時の値は7%から12%という低い値であり、社会的孤立傾向が認められなかった。31歳、 32歳の時も、4頭すべての娘、1位から3位までの中心部オスとの5m以内の近接をそれぞれ10%から20%の高頻度で行っていた。Petの毛づくろいの生起率は22歳の時も、31歳、32歳の時も30%前後で変わらなかった。しかし、22歳では毛づくろいをするよりも受けることが多かったが、31歳、32歳では逆に、毛づくろいを行うことの方が多くなった。特に、近縁メスと中心部オスへは毛づくろいを行うことの方が顕著に多かった。32歳の時に行った追跡観察(10分×143回、23時間50分)から、Petが他個体に接近する回数は、他個体から接近される回数よりも多く、Petが毛づくろいを開始するのは、毛づくろい請求を受けた時や毛づくろいのお返しとしてよりも、自発的に開始することが多かった。逆に、Petが毛づくろいを受ける際は、他個体からの自発的な毛づくろい開始よりも、Petの毛づくろい請求に基づくものが多かった。しかし、Petの毛づくろい請求の77%は失敗していた。以上から、αメスという高位であるためPetは他個体への積極的な接近、毛づくろいの自発的開始や請求が可能で、これが彼女の社会的孤立傾向を防ぎ、かつαの位置の維持に役立ったと思われる。

  • 松田 一希, 橋本 千絵, 五百部 裕, 湯本 貴和, Baranga Deborah, Clauss Marcus, Humme Jürg ...
    原稿種別: ポスター発表
    p. 41-42
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/22
    会議録・要旨集 フリー

    アビシニアコロブス(Colobus guereza)は、アフリカに最も広く分布するコロブス類の一種である。その分布域の広さから、同種内においてもその分布する地域によって、多様な採食行動が報告されている。 私たちの研究チームは、ウガンダ共和国のカリンズ森林保護区に生息する、本種の採食行動を調査している。私たちは、アビシニアコロブスの一群を人付けし、延べ4300時間以上もの本種の行動観察を30カ月間実施した(2013年11月~2016年4月)。行動観察に加え、調査地内の食物資源量を見積もるための毎木調査、植物フェノロジーに関する調査も行った。その結果、カリンズ森林のアビシニアコロブスは、 31種類の植物種を調査期間中に摂取し、強い葉食性(採食時間の87%)であることがわかった。最も好んで採食した植物は、アサ科エノキ属のCeltis durandiiの若葉であり、全採食時間の58%を占めていた(Matsuda et al. 2020, Primates)。本発表では、これらの基礎的な採食データと植物資源量のデータをもとに、アビシニアコロブスが採食する葉の選択性を、その栄養素、硬さ、牛のルーメン液を用いて計測した消化率といった観点から検討する予定である。

  • 武真 祈子, Bitencourt Aparecida, Saunier Euziane, Jesus Rogério, Rodorigue ...
    原稿種別: ポスター発表
    p. 42
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/22
    会議録・要旨集 フリー

    果実の果肉は多くの霊長類が好む食物である.霊長類は,果肉と葉,果肉と昆虫など,果肉とそれ以外の食物を組み合わせた食性を持つことが多い.そのため,食性の種間比較をする際には果肉以外の部分が注目されることが多く,共通部分である果肉利用の種差はほとんど検討されてこなかった.しかし,果実には多様な形質があり,霊長類側の体サイズや栄養要求も様々である.そのため,どんな果実の果肉を選択するかという点にも種ごとに異なる戦略があると考えられる.本研究では,主に果肉と種子を食べるキンガオサキと,主に果肉と昆虫を食べるコモンリスザルの果肉選択基準の違いを解明することを目的とした.2019年3月から2020年2月の間,フリーレンジングのサキ二群とリスザル一群を追跡し,スキャンサンプリング法で採食物を記録した.二種が果肉を利用した果実および利用しなかった果実について,形態(果実と種子のサイズ,固さ,重量,種子の数),果肉中の栄養成分(粗タンパク質,粗脂質,炭水化物,粗灰分,中性デタージェント繊維),果肉中のフェノール含有量を測定した.これらの測定値を説明変数として,サキとリスザルそれぞれの果肉選択に与える影響を一般化線形モデルによる多変量解析で検討した.サキの果肉選択にはタンパク質含有量が影響しており,タンパク質がより多い果肉が利用されていた.一方リスザルでは,灰分がより少ない果肉が利用されていた.霊長類のタンパク源として一般的なのは葉と昆虫だが,サキはそれらをほとんど食べないことが知られ,代わりに種子を食べることでタンパク質を摂取していると考えられてきた.本研究の結果から,種子を食べることだけでなくタンパク質の多い果肉を選択することもサキの採食戦略の一部であることが示唆された.このように,種ごとの採食戦略の違いは特徴的な食物利用に限らず,普遍的に利用される食物である果肉の選び方にも現れるということが明らかになった.

  • 久世 濃子, 金森 朝子, 山崎 彩夏, 田島 知之, 蔦谷 匠, Mendonça Renata, Bernard Henry, 木下 こ ...
    原稿種別: ポスター発表
    p. 42-43
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/22
    会議録・要旨集 フリー

    東南アジアに生息する大型類人猿のオランウータンは野生下での出産間隔が6~9年(平均7.6年)であり,霊長類の中で最長である(van Noordwijik et al. 2018)。2017年の日本霊長類学会における我々の発表では,オランウータンは少なくとも栄養状態が悪い時に初期流産している可能性は非常に低いことを報告した。本研究では,2019年に発生した2度目の大規模な一斉果実季の前後のデータを追加し,次の3つの仮説を検証した:(1)もともと(同じ土地を利用している)雌の妊娠が同調しており,一斉結実期にタイミングが合う場合も、合わない場合もあるのか、(2)雌は果実生産量が上がった後に妊娠するのか、(3)果実生産量が上がる前に妊娠しているのか(果実生産量の上昇をあらかじめ予測しているのか)。調査地はボルネオ島マレーシア領サバ州ダナムバレイ森林保護区内のダナム川の両岸2km2の一次林で,2005年3月~2020年3月に計180ヶ月間,毎月平均15日間,オランウータンを探索及び追跡し,直接観察により妊娠の有無を記録した(陰部の腫脹によって妊娠を判別し,ヒト用簡易尿検査キットも補助的に用いた)。また1ヶ月に1回計11kmの調査路を歩き,落下果実量を調査した。その結果,7頭の雌の妊娠12例中9例が,2010年(5例)と2019年(4例)の大規模な一斉結実季があった年に観察され,それ以外の年の妊娠は3例のみだった。3例中2例は小規模な 一斉結実があった年に妊娠しており,残り1例は出産直後に第一子を失った雌の2回目の妊娠であった。 また2019年の一斉結実期の妊娠のタイミングは,ほとんどが一斉結実期前だった。以上により,仮説(1),(2)は否定され,仮説(3),すなわち雌の妊娠は果実生産量が上がる前に成立することが支持された。 発表では,一斉結実を予測している可能性やその方法について考察する。

  • 田島 知之, 久世 濃子, 金森 朝子, 蔦谷 匠, Mendonça Renata S., 山崎 彩夏, Malim Titol P., ...
    原稿種別: ポスター発表
    p. 43
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/22
    会議録・要旨集 フリー

    オランウータンは昼行性真猿類の中で珍しく単独性の強い生活を営む。性成熟したオスの中には優位形態であるフランジオスと, 劣位形態であるアンフランジオスの2つの形態が存在する。両形態のオスはともに生殖能力を持ち, 異なる繁殖戦術を取る。ボルネオオランウータンにおけるオスの繁殖成功についての先行研究は攪乱を受けた河辺林, リハビリテーション施設周辺の半野生個体群で行われてきた。本研究は初めて攪乱の少ない一次林に生息する野生ボルネオオランウータンを対象として父子判定を行った。マレーシア・サバ州・ダナムバレイ森林保護区の低地混交フタバガキ林の約2平方km を調査地として,2011年から2019年に,9組の母子を含む32個体について行動観察と糞の採取を行った。糞からDNAを抽出して, マイクロサテライト11領域について遺伝子型を決定した。CERVUS(Kalinowski et al., 2007)を用いて母親が既知の9個体中5個体の父親を決定できた。そのうち4個体については2個体のフランジオスが父親であり,残る1個体はアンフランジオスの子であった。フランジオスが多くの子どもを残した結果は, 河辺林や半野生個体群の先行研究と近いことから,植生がオスの繁殖成功の分布に与える影響は小さいと考えられる。また解析したオスの中に父親を持たない子どもが存在したことから, 調査地で優位なフランジオスが全ての繁殖成功を独占することは難しいと考えられる。半野生個体群を対象とした先行研究では,アンフランジオスが代替繁殖戦術として生存率の低い初産の子を残すとされたが, 本研究では初産の子の父親はフランジオスであった。フランジオスの割合が高い野生ボルネオオランウータンでは, フランジオスの中でも優位でない個体が代替繁殖戦術を採用する可能性が示唆された。

  • 樺澤 麻美
    原稿種別: ポスター発表
    p. 43-44
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/22
    会議録・要旨集 フリー

    シエラレオネは西アフリカチンパンジー(Pan troglodytes verus)の生息国の一つである。同国ではチンパンジーは政治的及び呪術的な意味あいを持つことから,保全は困難であるという意見もあったが, 2019 年に同国の野生動物を代表する「国獣」となった。シエラレオネ国内と欧米及び日本における,チンパンジーと人の関係の変遷を,歴史的文献資料のシエラレオネのチンパンジーに関する記述,日本及び欧米諸国のチンパンジーの輸入・利用に関する資料,シエラレオネの野生動物保全活動及びチンパンジー・サンクチュアリー(保護施設)の違法ペット取引の記録をもとに振り返る。大航海時代と植民地時代に現在のシエラレオネ沿岸部を訪れた者の記録に,チンパンジーに関する記述が散見される。20世紀前半は,欧米での動物園や娯楽に始まり,後半にはアメリカと日本での医療実験を目的とした「生きた個体」の需要の高まりに応じて,シエラレオネでは数多くのチンパンジーが捕獲され,輸出された。同じ頃,チンパンジー研究者により保全の必要性も唱えられていた。その後,輸出が禁止され,絶滅危惧種となって久しい現在でも,過去の捕獲は同国内の違法取引に影響を与えている。違法取引や密猟により,孤児となったチンパンジーを保護するために,タクガマ・チンパンジー・サンクチュアリーが1995年に設立された。 1990年代は,欧米での大型類人猿の権利に関する議論や,生息国でリイントロダクションの科学的手法の試行が始められた時期でもある。サンクチュアリ活動は「愛護」であって,「保全」とは異なるという意見もあるが,同サンクチュアリはシエラレオネにおける野生チンパンジー保全の中心的役割を担っている。これまでの変遷を振り返り,今後のシエラレオネにおける野生チンパンジー保全と,チンパンジーを利用している国々の責任と役割について考察する。

  • 大坂 桃子, 平木 雅, 山越 言, 半谷 吾郎
    原稿種別: ポスター発表
    p. 44
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/22
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    屋久島では,1980年代よりニホンザルによる農作物被害が問題となってきた。現在も,主要な農作物である柑橘類(タンカン・ポンカン)を中心に,島全体で被害が見られる。一般に,ニホンザルの管理方法は科学的知見に基づいて確立されており,群れを単位とした個体数管理(群れの状況に合わせた捕獲)および被害対策(電気柵や追い払いなど)を合わせて行うことが理想的とされる。しかし,屋久島に生息するニホンザルの群れ数は非常に多く,群れ単位でのニホンザル管理を行うのは予算・人員確保の点から難しいのが現状である。本研究では,こうした固有の状況にある屋久島のニホンザル農作物被害の実態を明らかにし,屋久島におけるよりよいニホンザル管理方法を検討することを目的とした。本発表では,屋久島本島全24集落の区長に対する聞き取り調査および全集落の農地視察と電気柵点検調査による予備的な結果を報告する。調査の結果,集落ごとに被害の大きさにばらつきがあり,そこには①農業の実態,②電気柵の設置状況,③捕獲数に関する集落ごとの多様な特性が反映されていた。特に②電気柵の設置状況については,電気柵が果樹園を個別に囲んでいるか/集落全体を囲んでいるか,現在機能している電気柵がいつ頃設置されたものか,どのように電気柵の管理がされているのかといった点で集落ごとに非常に多様な現状が見られた。群れ単位でのニホンザル管理が難しい屋久島においては,電気柵の適切な設置を軸にした被害対策が重要だろう。

  • 吉田 洋, 蔵岡 登志美
    原稿種別: ポスター発表
    p. 44-45
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/22
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    前大会では,2019年10月~11月に,山梨県南都留郡富士河口湖町において,オトナメス1個体,ワカモノオス1個体,性別不明のコドモ1個体の計3個体で構成される野生ニホンザル「船津グループ」が人身被害を発生させ,そのうちのオトナメス1個体が同年11月20日に捕獲されると,その後に人身被害が発生しなくなったことを報告した。今回は,その後のモニタリング調査の結果を報告する。同町役場への聞き取りおよび現地調査の結果,オトナメス捕獲以降に,人身被害が発生していない状態が続いていた。 また「船津グループ」と,その母群と推測していた「吉田群」の行動圏内において,3個体以上のニホンザルの集団の存在が確認できなかった。「吉田群」の行動県内に設置された大型囲い罠だけでも,2017年度~2019年度に,39個体のニホンザルが捕殺されている。 このことから,2006年10月には77個体確認された「吉田群」は消滅し,「船津グループ」は個体数が減少した「吉田群」の生き残り,もしくは離散した群れの一部であったと推測する。前報告の結果とも勘案すると,捕獲が人身被害の発生および終息のきっかけになっている可能性が高く,被害発生のメカニズムを解明するためには,被害と群れの動態との関係を明らかにすることが重要と考える。さらに,「船津グループ」の目撃情報があり,市街地に位置するホテルの廃屋内に,2019年11月18日にセンサーカメラ 2 機を設置した。その結果,2021年3月31日までの486日間のうち14日間(3%)でニホンザルが撮影され,2020年11月は5日間(17%)ととくに多かった。雌雄年齢が判別された個体は,ワカモノメス1個体のみで,2個体以上のニホンザルが同時に撮影されることはなく,夜間にも撮影されていた。市街地を泊まり場にする個体は,人身・生活被害を発生させるリスクが高いため,被害終息後も,モニタリング調査と捕獲の努力を継続することが重要であると考える。

  • 小倉 匡俊, 小林 美晴, 三浦 明子, 三上 渉
    原稿種別: ポスター発表
    p. 45
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/22
    会議録・要旨集 フリー

    飼育下においてニホンザルMacaca fuscataは攻撃の頻度や強度が野生より高いことが多いとされる。 飼育施設によってはその攻撃が特定の個体に集中していることもあり、場合によってはケガを負うこともある。それに対し、この問題を環境エンリッチメントの導入により改善しようとする取り組みが試みられている。そこで本研究では飼育下ニホンザルの攻撃行動を軽減する手法を明らかにすることを目的に、 3種類の環境エンリッチメントの効果を比較した。実験対象は弘前市弥生いこいの広場で飼育されているニホンザル10個体とした。①コントロール、②展示場内上部へ消防ホースと枝葉を設置、③展示場外部へフィーダーを設置、④展示場内床部へワラに混ぜ込んだ餌をトロ舟に入れて設置の4条件で、それぞれ6日間ずつ連続して観察した。身体の接触を伴う攻撃を「激しい攻撃」、身体の接触を伴わない突進や威嚇を「軽い攻撃」、攻撃的ではない接近に対して距離を取る行動を「回避」とし、それぞれの生起回数を記録した。③において①と比較して激しい攻撃が減少した。③は展示場の外部にフィーダーが設置されているため餌を入手するのが最も難しい。また設置数も多く、個体間の距離を分散させる効果も高い。そのため激しい攻撃の減少が最も顕著であったと考えられる。また全ての環境エンリッチメント条件で①よりも回避が減少した。回避はケガへ到る攻撃行動につながるとともに、回避個体がストレスを感じている表れでもある。環境エンリッチメントの導入によりストレスを低下させることができていた可能性がある。本研究の結果から、適切な難易度と数の環境エンリッチメントを導入することで、飼育下ニホンザルにおける群れ内での攻撃行動を軽減することができることが明らかとなった。

  • 林 美里, 竹下 秀子
    原稿種別: ポスター発表
    p. 45
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/22
    会議録・要旨集 フリー

    物の操作は、ヒトを含む霊長類の認知発達をはかる比較尺度となる。道具使用の前提となる定位操作は、物同士を組み合わせる操作だ。この定位操作の発達について、ヒト乳幼児とチンパンジーでは縦断的に、ボノボ・ゴリラ・オランウータンでは横断的に観察をおこなった。ヒト乳幼児では、箱の穴に棒を入れる、積木をつむ、入れ子状にカップを組み合わせる、という3種類の定位操作が、すべて1歳前半に初出した。 チンパンジーでは、穴に棒を入れる定位操作は1歳前、3個のカップを組み合わせる定位操作は1歳半、積木をつむ定位操作は2歳半以降に初出した。ボノボではチンパンジーと同様に入れ子のカップの定位操作の出現が早く、ゴリラでは逆に積木をつむ定位操作の出現が早かった。オランウータンでは、入れ子のカップと積木の定位操作が、同じ年齢で出現した。 入れ子のカップ課題で、ヒトとチンパンジーの操作の階層性を指標とした種間比較をおこなった。両種ともに、カップを組み合わせる方略が、試行錯誤的な段階から、カップをまとまりとして操作する部品集積型による効率的な組み合わせへと変化した。飼育下の大型類人猿では、発達の時期や順序は異なるが、道具使用の前提となる定位操作が見られた。チンパンジーは穴に棒を入れる定位操作が大型類人猿の中でもっとも早くから見られ、野生チンパンジーが多様な道具使用をおこなう認知的基盤である可能性が示唆された。

  • 田中 正之
    原稿種別: ポスター発表
    p. 45-46
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/22
    会議録・要旨集 フリー

    コロナ禍において、動物園での展示は来園者の密集を避けるため、人が集まるガイド等のプログラムを休止している。京都市動物園では2008年からシロテテナガザルを対象にした学習の様子を来園者に公開で行ってきたが、上記感染防止の理由から2020年5月以降は開園日での実施は休止している。とくに同年7月から翌年2月までの約8か月間で、わずか4日、計81試行を実施したのみであった。2021年2月22日にどの程度課題を覚えているかをテストした。 対象は、京都市動物園で飼育しているシロテテナガザル(Hylobates lar)オス1個体で、テスト時の年齢は37歳10か月だった。2008年4月よりタッチモニター上のアラビア数字を1から順に触れていく課題の学習を開始し、2013年6月に1から8まで8個の数系列の学習が基準に到達し、9を加えた9個の系列学習を開始した。その後は学習基準に到達しないまま2020年まで学習を継続していた。テストでは、1から5まで、6まで、7まで、8まで、9までの5種類の課題を10問ずつ順に提示した。正解時にチャイム音に続いてリンゴ片を与える他、エラー時にもブザー音の後5秒程度のタイムアウトの後にリンゴ片を与えた。この強化スケジュールは、実験開始当初から同様であった。成績は、1 から5 までで8 問正解、 6 までで6 問、7 までで6 問、8 までで5問、9までで5問の正解だった。1から9まで10問の再テストを行った結果4問正解で、これらの結果は長期間の休止に入る直前の正解率(100問中44問)と差はなかった。この後、2,021年4月25日から緊急事態発出に伴って動物園が休園となり、学習機会を増やしたところ、成績は100問中47問正解であった。これらの結果から、長期の学習休止期間を経ても系列の記憶は保持されていることがわかった。

  • Subias Lorraine, Meunier Hélène
    原稿種別: ポスター発表
    p. 46
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/22
    会議録・要旨集 フリー

    Laterality designates a difference in the use of limbs and paired organs according to their position, right or left: one of the paired organs predominates over the other in the accomplishment of motor acts or in the perception of sensory signals. Brain lateralization has been widely studied, first in human species, then the existence of cerebral lateralization in non-human species, ranging from fish to primates, was highlighted. By determining the hand preferences in 64 common marmosets according to five behaviors (Grasp, Take to the mouth, Move, Handle, and Take out of mouth) performed during simple reaching, this study tries to highlight the marmosets' lateralization and the influence of the task complexity. Individuals were aged from 1.5 to 14 years and included 28 females and 36 males. Each individual was observed ten minutes once a day for one month while feeding. For each manipulative behavior, we recorded at least 20 occurrences. Despite strong individual preferences, no group bias was recorded. The strength of hand preferences appears to be influenced by the behavior: marmosets showed a lower laterality when handling the food. The impact of the posture has not been proved. No gender effects were revealed. Completed with the results of the project in which this study is performed, it seems that hand preferences are correlated with the complexity level of the task.

  • 村松 明穂
    原稿種別: ポスター発表
    p. 46
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/22
    会議録・要旨集 フリー

    チンパンジーの作業記憶について,先行研究では,コドモチンパンジーは,オトナチンパンジーやヒトの成人に較べて優れた能力を持つことが示されている。 これらの研究によって,チンパンジーとヒトの作業記憶における保持能力や方策について,共通点と異なる点も明らかになってきた。さらに,研究結果は,チンパンジーの作業記憶能力が,その生涯を通じて変化する可能性を示唆している。しかしながら,チンパンジー1個体の作業記憶能力について縦断的に調べた研究はない。また,ヒトを対象とした研究においても,発達と加齢が作業記憶に与える影響についての報告や研究が数多く存在する一方,ほとんどの研究は,若齢群と高齢群の横断的比較によるものである。

    本研究の目的は,縦断的研究によってチンパンジーの一生涯における作業記憶能力の変化の過程を明らかにすることである。京都大学霊長類研究所で飼育されているチンパンジーたちは,10年以上に渡って記憶に関する実験的研究に参加してきた。今回の分析では,チンパンジー6個体のおよそ10年分の作業記憶課題のデータを対象として,1)コドモ・ワカモノ個体がオトナ個体となる期間,2)オトナ個体が老齢個体となる期間それぞれにおける,各個体の作業記憶能力の変化を追った。この分析の進捗状況について報告する。

  • 毛利 恵子, 戸田 和弥, 服部 裕子, 足立 幾磨, 橋本 千絵
    原稿種別: ポスター発表
    p. 47
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/22
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】野生動物の尿中生理指標の分析はその個体の身体的生理的状態(性成熟,栄養状態,ストレスなど)を知る非侵襲的で有効な方法である。しかし,液体状態であるため,その成分の保存は温度,pH,細菌などの影響を受けやすい。影響の受け方は成分によって様々であり,さらに野生動物の尿試料を採取・保存する場合には保存状態を管理することが難しい。 生理指標を正確に測定するために野生動物の尿試料の保存法を確立することは非常に重要となる。本研究では,保存状態を変えて尿成分の安定性を調べた。 【方法】飼育下のチンパンジーの尿を使って以下の保存条件[①温度,②期間,③添加物の添加,④尿処理(酸性化,アルカリ化,滅菌)]を変えた尿の生理指標[①尿比重,②creatinine,③C-peptide などの尿中ホルモン代謝物]を測定した。【結果】4℃,室温(20℃~23℃),30℃の温度で保存した尿比重,creatinine 共に24時間まで変化しなかった。その後4℃保存の試料は7日たっても変化しなかったが,室温,30℃保存の尿比重は2日目以降上がりその後7日目まで上がったままだった。一方creatinine は,30℃で2日間保存すると3サンプル中2サンプルで急激に減少し,この減少したサンプルは室温で5日間保存すると同様に減少した。ところが,これらのサンプルを滅菌処理(0.2μmのメンブレンフィルターに通す)するとどの温度で保管しても7日間尿比重creatinine 共に変化しなかった。C-peptideは今回の尿試料の実験(n=2)ではどの温度条件でも24時間までは変化がなかった。【考察】野生動物の尿サンプル採取の際滅菌処理(フィルターに通す)をすることは不純物の除去や保存性を高めるうえで有効である。 今後ペプチドホルモンやステロイドホルモンの液体状態での保存の安定性についてもサンプル数を増やして調べる予定である。

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