主催: 日本霊長類学会
会議名: 日本霊長類学会大会
回次: 37
開催地: オンライン開催
開催日: 2021/07/16 - 2021/07/18
p. 39
タンザニアの疎開林地帯のウガラ地域(05°13′S, 30°28′E)で,チンパンジー(Pan troglodytes)の採食物量(果実量)の季節変化と,チンパンジーのパーティサイズについて分析をおこなった。ウガラ地域は,チンパンジーの生息域の中で最も乾燥した地域の1つで,疎開林が80%以上を占め,他には川辺林と草地が存在する。本研究ではフェノロジー調査で収集した各季節の採食可能な果実の量,直接観察の調査で収集したチンパンジーのパーティサイズ,糞分析で収集したチンパンジーの採食品目といったデータを利用して分析をした。樹上果実量の季節変化のデータは,ベルトトランセクト(長さ10km 幅4m)を設けて植生調査をした後に,2010年9月から2週間に一度,各樹木の樹上果実量と果実の色を1年間に渡り記録した。樹上果実量の比率は,樹上に最も多く結実した状態を100%として,100%,80%,60%,40%,20%,0%に分類した。この果実量の比率と胸高直径断面積の値をもちいて,季節ごとに樹上の採食可能な果実量を算出した。また,草本の果実のAframomum mala の結実数と色による成熟果実の季節変化を調査した。その結果,樹上果実量は雨季に比べて乾季で有意に高かった。草本の果実は,雨季前半は結実数が少なく未成熟だったが,乾季には成熟果実の割合が半数以上を占めた。糞中に占める葉や茎などの植物の繊維質の出現割合は,雨季に高く,乾季には少なかった。チンパンジーのパーティサイズと,チンパンジーの糞中に占める繊維質の割合には負の相関があった。また,チンパンジーのパーティサイズと果実量には正の相関があった。以上のことより,雨季には果実が少なく,この時期にチンパンジーは,植物の繊維質をよく採食しており,またパーティサイズを小さくすることで採食競合を避けて,疎開林地帯に適応していると考えられた。