霊長類研究 Supplement
第37回日本霊長類学会大会
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ポスター発表
ヤクシマザルによる農作物被害の実態とその集落間比較
大坂 桃子平木 雅山越 言半谷 吾郎
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p. 44

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抄録

屋久島では,1980年代よりニホンザルによる農作物被害が問題となってきた。現在も,主要な農作物である柑橘類(タンカン・ポンカン)を中心に,島全体で被害が見られる。一般に,ニホンザルの管理方法は科学的知見に基づいて確立されており,群れを単位とした個体数管理(群れの状況に合わせた捕獲)および被害対策(電気柵や追い払いなど)を合わせて行うことが理想的とされる。しかし,屋久島に生息するニホンザルの群れ数は非常に多く,群れ単位でのニホンザル管理を行うのは予算・人員確保の点から難しいのが現状である。本研究では,こうした固有の状況にある屋久島のニホンザル農作物被害の実態を明らかにし,屋久島におけるよりよいニホンザル管理方法を検討することを目的とした。本発表では,屋久島本島全24集落の区長に対する聞き取り調査および全集落の農地視察と電気柵点検調査による予備的な結果を報告する。調査の結果,集落ごとに被害の大きさにばらつきがあり,そこには①農業の実態,②電気柵の設置状況,③捕獲数に関する集落ごとの多様な特性が反映されていた。特に②電気柵の設置状況については,電気柵が果樹園を個別に囲んでいるか/集落全体を囲んでいるか,現在機能している電気柵がいつ頃設置されたものか,どのように電気柵の管理がされているのかといった点で集落ごとに非常に多様な現状が見られた。群れ単位でのニホンザル管理が難しい屋久島においては,電気柵の適切な設置を軸にした被害対策が重要だろう。

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