霊長類研究 Supplement
第37回日本霊長類学会大会
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ポスター発表
野生および飼育テングザルの前胃由来細菌がもつ植物二次代謝産物分解能
橋戸 南美土田 さやか東野 晃典清野 悟Saldivar Diana A RamirezGoossens Benoit松田 一希牛田 一成
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p. 49

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抄録

コロブス類は葉食に特化した食性を示しており,反芻動物のような複数に分かれた胃をもつ。葉には二次代謝産物として,アルカロイドやテルペノイドなどの毒性成分やタンパク質と結合して消化を阻害するタンニンなどの難消化性成分が含まれる。コロブス類でも反芻動物のように複胃中の微生物がこれらの物質を分解することが示唆されているが,その詳細は不明である。我々は,コロブス類前胃内細菌がもつ植物二次代謝産物の分解能を明らかにすることを目的として,テングザル前胃内細菌の分離培養を行った。これまでに飼育テングザル前胃には新種の乳酸菌(Lactobacillus nasalidis)が共生していることを明らかにした(Suzuki-Hashido et al. 2021)。今回,野生個体前胃内容物の凍結乾燥試料からの細菌の分離培養を試み,新種の乳酸菌L. nasalidisを含む7種の細菌種の分離に成功した。野生,飼育どちらの個体の試料からもL.nasalidisStreptococcus gallolyticusの2種の乳酸菌が分離できたため,この2菌種について植物二次代謝物質分解能や生理生化学性状を比較した。L.nasalidisは,最も近縁な種であるL. delbrueckii subsp. indicusとは異なり,野生・飼育個体由来のどちらの株も青酸配糖体アミグダリンを含む7種類の糖に対して高い分解性を示した。また,飼育個体由来株は野生個体由来株に比べて高いNaCl抵抗性を示しており,これは飼育個体がペレットなどのNaClを多く含む食物を食べていることに起因していると考えられた。他の2種についても同様に野生個体由来株と飼育個体由来株で比較する。特に,S. gallolyticusは高いタンニン分解性を示すことが知られているため,野生・飼育下の採食植物の違いに着目して,2菌種の由来による生化学性状の違いについて議論する。

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© 2021 日本霊長類学会
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