主催: 日本霊長類学会
会議名: 日本霊長類学会大会
回次: 37
開催地: オンライン開催
開催日: 2021/07/16 - 2021/07/18
p. 55
[目的] 同調圧力が私たちの日常にどのように作用しているかを明らかにし、これからの社会のありようについて考えることを目的とした。[方法] まずは身近な授業中の挙手に着目した。国分寺高校生143人に授業中の挙手についてのアンケートを行った。加えて生徒29人を対象にグループ討論形式の実験を行った。 [結果] 9割の人が手を挙げていないことがわかった。また、手を挙げる人は、「誰も手を挙げていないから」手を挙げ、逆に挙げない人は、「答えにくい雰囲気」があるからだとわかった。このことから、手を挙げる1割の人は、手を挙げない9割の人の圧力によって挙げていると推測できる。ここで、「答えづらい雰囲気」をなくすには、周りの人が相槌を打つことが有効ではないかと考え、実験を行った。実験では、 1グループ4〜5人となって、「高校生はアルバイトをすべきか否か」というテーマで討論を行った。特に指示せずに討論するグループと、全員に意識的に相槌を打ってもらうよう指示して討論するグループをそれぞれ3つ作った。全グループ同じように最初に自分の意見を述べてから討論を始めてもらった。結果、相槌回数が多いほど、挙手数が多くなった。このことから、相槌がグループでの話し合いに有効であることがわかった。また、どのグループも最初は意見が割れたが、全グループで最終的に全会一致となった。また、討論中、反対意見の人を強引に自分の意見に変えようとする言動は見られなかった。最初に全員の意見を述べた際に多数であった意見が、全グループで、最終的な合意意見となっていたことがわかった。これは意識せずに同調圧力が働いたことが推測できる。 [考察] 同調圧力がなぜ生じたのかは人類が社会を形成し、自然界の中で生き延びてきた歴史と関連付けて考察していかなければならない。社会を維持するために他者と共感する必要性はあるとしても、一方で自分の意見を明確にしない、できない社会を私たちはどのように変えていったらよいか考察した。