主催: 日本霊長類学会
会議名: 日本霊長類学会大会
回次: 38
開催地: 京都府
開催日: 2022/09/16 - 2022/09/19
p. 33-
アルディピテクス・ラミダスは、エチオピア・アラミスから発掘された440万年前の初期人類である。体重約50kg、身長約120cm、体と犬歯の性的二型は小さく、足に拇指対向性が認められたことから樹上性が強く、果実食傾向の強い雑食者であると推定されている。他方、その生息環境については、発見者らが古生物学的証拠をもとに森林に近い環境であると考えるのに対し、非発見者らは安定同位体等の証拠から川辺林とサバンナのモザイク環境だとし論争が続いている。本発表では、現生7属の霊長類において、群れとして生存できるか否かを推定する上でその有効性が立証されている「群れ生存の時間的制約モデル」をアルディピテクス・ラミダスに適用し、その生息地推定を試みることを目的とする。このモデルは、それぞれの場所で気温や降水量などの気象要因等によって決まる活動時間配分上の時間的制約があるとの発想に基づいているが、本発表では発見者らが生息環境に近いとする現在のケニア・キブヴェジ森林と非発見者らが近いとする現在のアラミス、それぞれの気象データ等を用いる。また、サバンナ性ではあるが四肢が短く樹上性が比較的強く、果実食性の強い雑食性であるなどの類似性から、サバンナモンキー属のモデル(Willems & Hill 2009)を、体重の違いを補正したうえで適用することとした。その結果、アルディピテクスの体重を50kgとした場合は、いずれの場所でも生存できないと推定された。しかし、体重が32.1~40kgであれば、キブヴェジ森林でのみ、最大65~72人の集団を形成して生息できると推定された。他方、アラミスでは乾燥に由来する植生密度の低いから、移動時間や採食時間が長く必要で、最低限必要な10%の休息時間を確保できないため生息できなかった。