霊長類研究 Supplement
第76回日本人類学会大会・第38回日本霊長類学会大会連合大会
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口頭発表
ヒト集団における嗅覚受容体遺伝子群の集団分化と平衡選択
河村 正二AKHTAR Muhammad S.新村 芳人東原 和成MELIN Amanda D.
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p. 34-

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抄録

嗅覚受容体(OR)遺伝子群は、ヒトにおいて約400個ずつの無傷な遺伝子と欠損をもつ遺伝子から構成されている。しかし、多くのヒト集団においてOR遺伝子群の多様性はよく調べられていない。本研究では、アジア、ヨーロッパ、アフリカ系由来の計410人のゲノムDNA試料に対し、targeted captureと大規模並列短鎖解読型シーケンシングを行い、OR遺伝子群の多様性を中立ゲノム領域と比較した。Captureに用いたプローブは、ヒト参照ゲノムhg38中の398個の無傷なOR遺伝子、85箇所の単一コピーでタンパク質非コードゲノム領域、塩基配列から同定した4個の非命名OR遺伝子、99個の「ほぼ無傷な」OR遺伝子、そしてhg38になくチンパンジーゲノムデータベースPantro3.0にある53個のOR遺伝子に対して設計した。これらにより112個のOR遺伝子を無傷型と欠損型をアリル多型として持つsegregating pseudogeneとして新規に同定し、CNVを176個のOR遺伝子に同定した。塩基配列多型に基づく集団遺伝距離dAおよび主成分分析により、OR遺伝子群は中立対照よりも集団分化が大きいことを示した。Tajima’s D値はOR遺伝子群が中立対照より全体的に大きく、多くのOR遺伝子にアリル多型を維持する平衡選択が働いていることを示唆した。これらの結果はまた、多様性を考慮したプローブデザインが、OR遺伝子群の多型を明らかにする上で全ゲノムアプローチよりも効果的であることも示している。

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© 2022 日本霊長類学会
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