霊長類研究 Supplement
第76回日本人類学会大会・第38回日本霊長類学会大会連合大会
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口頭発表
原人に生理的早産はあったか(続報)
海部 陽介矢野 航彦坂 信清水 大輔西村 剛久保 大輔森本 直記
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p. 36-

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抄録

ヒトの新生児はたいへん未熟な状態で生まれる一方,生後1年ほどの期間,胎児期のような速い脳成長を続けることが知られている。二次的就巣性あるいは生理的早産などと呼ばれるこの出生と成長の特質は,ヒト以外の真猿類にはみられない独特なもので,ヒトが脳を大きく成長させることができる根本的メカニズムの1つとなっている。しかしこの成長様式が人類進化のどの時点で獲得されたかは,現時点でよくわかっていない。これまで幼児頭骨や骨盤の化石を用いて,化石人類における新生児の脳成長パターンを復元する試みがなされてきたが,この手法では誤差が大きく説得力のある議論は難しい。そこで演者らは,より効果的な代替として,新生児の頭骨が未熟であることに起因する変形性斜頭(頭位性斜頭)に着目した新手法を以前に提示した。本発表ではこれを利用して,原人がヒト的成長パターンを獲得していたかどうかを検討した結果を報告する。

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