霊長類研究 Supplement
第76回日本人類学会大会・第38回日本霊長類学会大会連合大会
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口頭発表
オトナオスによるメス乳児の一時的な養子取り
竹元 博幸和弥 戸田橋本 千絵古市 剛史
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p. 47-

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抄録

東アフリカ、カリンズ森林のオトナオスチンパンジーが、離乳していないメスのアカンボウを少なくとも6日間運び、世話をしていたことを報告する。当該オスのBR(推定40歳以上)がアカンボウ(♀推定1-1.5歳)を運んでいたのは2021年8月19日から24日で、それ以前の8月18日までと、以後の25日以降、アカンボウを運んでいなかったことを確認している。この期間、アカンボウは常に体をBRに密着させていて、いっときでもBRが離れると声を出し(Whimpering)、BRが手を差し伸べて抱きかかえていた。BRはアカンボウを運び、休息時は腹側に抱き、グルーミングをし、さらにアカンボウを観察者から保護する行動も見られた。アカンボウの母親とみられるメスは見当たらず、BRがアカンボウの父親である可能性も低く、オトナオスによる孤児の一時的な養子取りと考えられた。養子取りは、主に兄や姉などが世話をする血縁選択、メスの新生児への興味、またはオトナオスとコドモオスの互酬的利他行動に起因すると言われている。今回の観察は父親以外のオトナオスによるメスのアカンボウの世話と考えられ、いずれにも該当しない。また、未離乳孤児の世話は、生存期間が短いためか、あまり観察例がない。このメスのアカンボウも8月25日以降観察されていないので、衰弱してBRにしがみつけなくなったのだろう。オトナオスによるオス孤児の世話は将来のオス同士の連携によって利益を得られるから、という仮説が提唱されてはいるものの、西アフリカでは、オトナオスが養子にした孤児(ただしほぼ全てが2歳以上)の半数はメスであったらしい。実際は今回の観察のように、オスが孤児を世話するとき、その性別はあまり気にしないのではないだろうか。

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