霊長類研究 Supplement
第76回日本人類学会大会・第38回日本霊長類学会大会連合大会
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口頭発表
ベニガオザルのオスの集団間移籍傾向:協力行動の核となる個体間関係の形成について
豊田 有丸橋 珠樹MALAIVIJITNOND Suchinda松田 一希
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p. 50-

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抄録

発表者らがタイ王国で研究を続けている野生ベニガオザル集団では、オス複数頭が協力してメスを他の競合オスから防衛し、囲い込んだメスと交互に交尾をする連合形成のような繁殖戦略が見られる。母系社会を基盤とするマカク属においては、オスは性成熟に達する頃に出自集団から他集団へ移籍するため、集団内のオス間には血縁的関係がないことが一般的である。よって、ベニガオザルのオス間で観察される繁殖をめぐる連合形成は、非血縁個体間での協力行動と考えられる。本発表では、ベニガオザルのオス同士が協力する際の協力相手の選択基準を検討するため、オスの集団間の移籍傾向に着目した。調査地・対象は、タイ王国のカオクラプック・カオタオモー保護区に生息する野生のベニガオザル5集団である。私たちは、2015〜2019年の間に、少なくとも54例のオスの集団間移籍を観察した。この移籍記録を詳細に分析した結果、1)複数回移籍を繰り返すオスの存在、2)同時期に複数頭が連れ立って集団を移籍する同時移籍、3)同じ群れから先行して移籍していったオスがいる群れを移籍先に選ぶ並行移籍、が確認された。これらの移籍傾向によって、ベニガオザルの集団に所属するオス同士の間に、出身群が同じで、血縁的に近い関係にあるオスの組み合わせや、過去のある時期に同じ群れに所属していた顔見知り関係にあるオスの組み合わせが存在することが明らかになった。本研究により明らかとなったオスの移籍傾向を基に、ベニガオザルでみられるオス間関係の特殊性と、血縁関係にないオス同士による協力行動の発現機構を議論する。

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© 2022 日本霊長類学会
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