霊長類研究 Supplement
第76回日本人類学会大会・第38回日本霊長類学会大会連合大会
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ポスター発表
石垣島白保竿根田原洞穴遺跡出土の歯について(予報)
河野 礼子片桐 千亜紀土肥 直美
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p. 54-

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抄録

石垣島・白保竿根田原洞穴遺跡では、2007 年の発見以来、更新世末の3 万年前ごろから近世にかけての文化層が確認され、計7 回の発掘調査でのべ74 m2 に及ぶ面積が発掘され、更新世末から完新世初頭の1100 点を超す人骨片が回収された。この中には「顔のわかる」保存のよい頭骨4 体分を含め、約20 個体分の骨が含まれていることが判明している。人骨の年代は、放射性炭素年代法によって、更新世末から完新世初頭を主体とすることが明らかになった。これらの人骨資料は世界的にも前例のない規模のものであり、更新世日本列島人の姿が今までにない精度で明らかになることが期待される。また、白保の洞窟が断続的に墓地として利用され、その葬法は琉球地方に近年まで受け継がれてきた「風葬」に類似するものであったこともわかってきた。今回の発表では、白保の人びとの形態学的特徴を明らかにする研究の一環として、歯牙資料について予報的に紹介する。発掘調査とその後の水洗作業によって遊離歯・植立歯合わせて200本を超える歯が回収されており、これらを歯種や形状、咬耗状態などから総合的に判断して4個体の頭骨分を含む27個体と、個体識別不可能分とに分けた。今回は主に更新世の層序出土資料について、齲蝕や咬耗の状態や、形成不全の見られる例などの観察所見を紹介するとともに、咬耗の軽微な資料についてスタンダードな歯冠径の計測を行った結果を報告する。特に咬耗状態については、頭骨のうち2個体について、上下歯の咬耗度がおおきく異なるなどの特殊な状況が認められた。また3根の小臼歯など原始的な特徴を有する個体も認められた。今後さらに分析を進めることで歯の特徴から白保人の姿を明らかにしていくことを目指す。

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