霊長類研究 Supplement
第76回日本人類学会大会・第38回日本霊長類学会大会連合大会
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ポスター発表
動物園来園者の生餌に対する許容度:対象種と回答者の年齢による違い
山梨 裕美一方井 祐子徳山 奈帆子赤見 理恵本庄 萌
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p. 70-

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抄録

近年動物の倫理的な扱いに関する関心が高まっている。世界各地の動物園でガイドラインの制定などが進められている。動物に関する倫理的な考え方は個人や文化によって異なる一方で、ガイドラインにはある程度の一貫性が求められる。差異を超えた冷静な議論のためには、こうした差異がどこに、またどのように生まれるのかについて定量的に検討することは重要であると考えられる。

今回、動物園において捕食動物のために生きた動物を与える(生餌)という、見方によって倫理的な判断がわかれると考えられる事象について、その許容度が対象種や年齢によってどのように変化するかを検討した。動物園(京都市動物園及び公益財団法人日本モンキーセンター)の来園者1000人(3~86歳)を対象にアンケート調査を行った。ウサギ・マウス・ヒヨコ・カエル・金魚・イワシ・タコ・ザリガニ・アサリ・コオロギ・ミミズについて、それぞれ動物園において他の動物に生きたまま餌として与えることについて同意できるかどうかを選択式で尋ねるとともに、その選択の理由についても尋ねた。

 結果として、哺乳類や鳥類を生餌にすることに対する許容度は低く、爬虫類・魚類・無脊椎動物になるに従いあがっていくことがわかった。12歳以下のこどもは特に許容度が低く、年齢があがるに従い許容度はあがり、20歳以上になると年齢によって変わらない許容度となった。すべての動物種において許容できるとした人は27.2%いたがその多くが、理由として自然の摂理・弱肉強食・食物連鎖・仕方がないといったものをあげていた。対象種によって回答が異なった場合には、動物への愛着や好みなどが影響しており、動物の苦痛についての言及は少なかった。大人になるに従い、純粋に食べられる動物が可哀そうという立場から、少しずつ許容していくこと及びその理由の多くが感覚的な判断によるものであることが示唆された。

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