霊長類研究 Supplement
第76回日本人類学会大会・第38回日本霊長類学会大会連合大会
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ポスター発表
新学習指導要領下の義務教育と人類学・霊長類学との接点をさぐる
高野 智赤見 理恵
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p. 71-

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抄録

人類学や霊長類学の振興のためには,若い世代の興味,関心を引き出すことが欠かせない。高等学校では,総合学習や理科で生物を選択している生徒を対象に,専門家が関与する多くの事例がある。しかし,より裾野を広げるには義務教育との継続的な連携を模索する必要がある。継続的な連携には学校カリキュラムとの連携を図ることが望ましいが,学習指導要領の改訂にともない,小学校では2020年度から,中学校では2021年度から新課程が導入されている。小学校では基本的に旧課程の単元構成が踏襲されたため,4年生理科「人の体のつくりと運動」や6年生理科「生物と環境」などの単元で引き続き接点を作ることができる。中学校においては,旧課程では理科第2分野で2年生が学習する動物関連分野での連携が可能だったのだが,新課程では1年生で生き物の分類,2年生で体のしくみ,3年生で進化を学ぶように大幅なカリキュラムの再編がおこなわれ,従来の連携が困難になった。日本モンキーセンターでは長年にわたって地域の小中学校と連携してきたが,新課程の導入に伴い,中学校向けの新たなプログラム作りに取り組んでいる。現在までに,学校教員との協働により1年生の「生き物の分類」に関連するプログラムを開発し,改善しながら実践を重ねている。本プログラムでは,10種程度のヒトを含む霊長類について,観察を通して自分なりの分類に取り組む。霊長類の系統分類について予備知識をもつ中学生はほとんどいない。予備知識の少ない霊長類について自ら分類基準を考案し,仲間分けをすることにより,自ずと細部まで観察するようになる。それによって分類の意義について理解を深め,関心を高める効果が得られていると思われる。

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© 2022 日本霊長類学会
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