霊長類研究 Supplement
第76回日本人類学会大会・第38回日本霊長類学会大会連合大会
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ポスター発表
特別展「妙高高原のスノーモンキー」の開催とその評価
赤見 理恵杉山 茂星野 智紀伊谷 原一
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p. 72-

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抄録

動物園は「自然への窓」としての役割を持つ。飼育動物を見てわかることだけでなく、野生のくらしや生息環境、調査の様子などを来園者に伝えるため、特別展「妙高高原のスノーモンキー~冬の笹ヶ峰でニホンザルをさがす~」を開催した。日本モンキーセンターのビジターセンター内特別展示室にて2021年9月18日~2022年2月28日の会期で、京都大学・霊長類学・ワイルドライフサイエンス・リーディング大学院の共催、日本霊長類学会、妙高市、犬山市、両市教育委員会の後援、トヨタ環境活動助成プログラムの協力で開催した。展示は、①ニホンザルの分布と調査地マップ、②ドローン映像コーナー、③妙高市笹ヶ峰での調査概要、④調査用具の紹介、⑤サルの食痕などの紹介、⑥妙高高原への誘い、⑦“下北産”ニホンザル剥製、より構成した。展示評価のため会場出口でアンケートへの協力を求め、会期中に98件の回答を得た。満足度(おもしろかったか・ためになったか)は5段階評価でともに平均4.6で、おおむね好評だった。興味を引かれた展示を複数選択する設問への回答は、②ドローン映像コーナー(53%)、①ニホンザルの分布と調査地マップ(49%)、⑤サルの食痕などの紹介(48%)が上位だった。「野生のニホンザルを見たことがあるか」には75%が「ある」と回答し、年齢層が高いほど見たことがある割合も高かった。見た場所は「森林」が多かったが、「田畑」や「市街地」、「その他」で園内を示す回答も10件あった。園内で野生のニホンザルを見たという回答は低い年齢層で多かった。大きなスクリーンを使った②や実物を展示した⑤に興味を引かれるのはうなずけるが、パネルのみで構成した①にも興味を引かれたのはなぜか。自由記述では、自分の居住地やサルを見た経験と重ね合わせた記述や、研究者・調査者のコメントに共感する記述が見られ、このような自分との関わりや共感が興味を引く要因になったと考えられた。

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© 2022 日本霊長類学会
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