霊長類研究 Supplement
第39回日本霊長類学会大会
会議情報

口頭発表
カメルーン東南部熱帯雨林地域における霊長類を対象にした狩猟活動の実態と保全のための課題
赤岡 佑治
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 31

詳細
抄録

中部アフリカ熱帯雨林地域において霊長類は、種子散布者として森林生態系の維持に必要不可欠な生物群である。しかし近年、都市部での急激な人口増加に伴う狩猟活動の激化により、アフリカ各地でその個体数の減少や局所的な絶滅が報告されている。効果的な野生霊長類の保全活動を実施する上で、各種霊長類の生態的な特徴を把握することは必要不可欠である。一方で、日常的に野生動物を狩猟し、その獣肉を利用している地域住民の視点から霊長類の保全管理について議論することも同様に重要であるにも関わらず、実際に地域住民による霊長類を対象にした狩猟活動の実態を詳細に調べた研究事例は数少ない。発表者は、カメルーン東南部の熱帯雨林地域に位置するブンバベック国立公園に隣接するグリべ村において2022年9月~2023年5月の期間、「①霊長類を対象にした狩猟活動の実態調査」「②地域住民による霊長類の獣肉利用に関する調査」「③ライントランセクト法による野生霊長類の個体数調査」を実施した。本発表では、それぞれの調査から得られた予備的な調査結果を発表し、カメルーン東南部熱帯雨林地域における野生霊長類の保全のための課題について議論したい。特に①に関しては、地域住民の銃を使用した狩猟活動に同行した結果、カメルーンの森林省で厳密に禁止されているニシゴリラ(Gorilla gorilla)やシロクロコロブス(Colobus guereza)などの希少な霊長類種が日常的に狩猟されていることが分かった。また、地域住民に対してグリべ村で銃器の所有する者の人数および1年間の狩猟活動を実施回数について聞き取り調査を行った結果、銃器を用いた狩猟活動が地域に生息する霊長類に対して従来の予想をはるかに上回るインパクトを及ぼしている可能性が示唆された。銃器を用いた狩猟活動の規制は中部アフリカ熱帯雨林地域において野生霊長類の保全について考究する上で大きな課題となるだろう。

著者関連情報
© 2023 日本霊長類学会
前の記事 次の記事
feedback
Top