霊長類研究 Supplement
第39回日本霊長類学会大会
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口頭発表
寒冷地適応として強く矮小化したニホンザル金華山集団の外鼻形態
矢野 航島田 将喜
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p. 40-41

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抄録

 ニホンザル(Macaca fuscata)は南北に長い列島に広く分布する固有種であり、1種の中で亜熱帯から亜寒帯までの気候変異に適応して、頭蓋顔面部に様々な形態的変異を持つことが知られている。とくに島嶼個体群は個体数の少なさと環境変動の大きさから進化圧が強くかかる。これまでの頭蓋骨研究から、宮城県石巻沖の金華山の個体群には鼻部骨格に強い矮小化が見られていたが、外呼吸器の入り口として重要な機能を持つのは外鼻のうち軟骨および皮膚の形態であることから、進化的適応を議論する上で生体の体表面観察が欠かせない。そこで本研究では亜寒帯の個体群(金華山A群、B1群、D群)と温帯の個体群(嵐山E群)の外鼻サイズを野外で撮影された正面からの写真に基づき比較した。野外撮影写真の場合、カメラに対して角度のある方向を向いていることが多い。そこで本研究では鼻幅、鼻高を同じ傾きを持つ顔面幅、顔面高でそれぞれ標準化し、外鼻の相対サイズを求めた。その結果、金華山個体群は骨格形態と同様の強い外鼻部の矮小化が起こっていることが分かった。これまでの先行研究と合わせて、島嶼化による体サイズの矮小化とベルグマン則による体サイズの大型化が重なり、結果的に全体的には弱い矮小化が起こるとともに、鼻部のような末端部位はアレン則で説明されるような強い矮小化を受け、局所的に小さい鼻部を持つことで放熱を抑えて、寒冷地適応としての体温保持を行っていると考えられる。

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