主催: 日本霊長類学会
会議名: 日本霊長類学会大会
回次: 39
開催地: 兵庫県
開催日: 2023/07/07 - 2023/07/09
p. 47
生物進化において、ヒトは巨大化した大脳や高度な知性など独自の神経機能を獲得している。こうしたヒト特異的形質の獲得メカニズムを理解するためには発生過程を含め、近縁種との種間比較が重要であるが、霊長類の発生における細胞内プロセスを解析することは倫理的にも技術的にも困難である。ヒトやチンパンジーの人工多能性幹細胞(iPS細胞)を用いた分化誘導系は、ディッシュの中で細胞分化過程を再現しながら任意の細胞を入手することが可能であり、新たなヒト進化学の研究手法として注目されている。これまでに我々は分化誘導の起点となるiPS細胞のトランスクリプトームをヒトとチンパンジー間で比較解析し、細胞分化過程で生じる遺伝子発現プロファイルを理解するための基盤を作り出してきた。そこで、今回はこれらのiPS細胞から神経幹細胞を誘導し、神経発生過程における遺伝子発現の種間比較解析を試みた。dual Smad inhibition法を用いて、iPS細胞を12日間分化誘導し、免疫染色と定量PCRでマーカー遺伝子の発現を確認したところ、両種ともに神経幹細胞と認められる細胞を得ることができた。現在、この分化誘導系を用いて、初日から12日まで2日おきに細胞を回収し、経時的なトランスクリプトームの種間比較解析を行っているところである。本発表ではこれらの結果について議論したい。