霊長類研究 Supplement
第39回日本霊長類学会大会
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中高生発表
ウミウとカワウを比較する
大野 孝斗山内 健心津田 涼榎濱口 天弥
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p. 56

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抄録

我々は、岐阜県関市の鵜匠宅で飼育されているウミウ13羽の群れを、約2年間、継続的に観察した。カタライ(語らい)と呼ばれる独特のペア飼いや、カタライ同士の親密な行動、シントリ(新鳥)と呼ばれる若鳥の行動に注目し、個体間に生じる優劣や親疎に関する考察を行った。興味深い観察結果が得られたものの、飼育下という特殊な環境での観察に限界を感じ、野生ウミウの観察を計画したが、岐阜県やその周辺でウミウの群れに関する情報を得られなかったので、まずは愛知県師崎に生息するカワウの群れを観察することにした。結果、ウミウとカワウの行動には予想以上の共通点があり、カワウの群れの中にも、飼育ウミウに同じくペアで行動する姿や、ペア同士で嘴や頭部をすり合わせるカタライに類似した行動を観察することができた。さらに、カワウの群れの中に、ウミウと考えられる個体を複数確認することができた。ウミウの嘴基部に続く裸出部は黄色を呈し輪郭が三角状に尖る。これに対しカワウの裸出部も同じく黄色を呈するが輪郭が丸みを帯びるので、望遠レンズを使った撮影により両者の識別が可能である。今回の観察結果にみられるウミウの混在が、偶然なのか、あるいはある程度常態化しているのか。留鳥であるカワウと、越冬のため冬鳥として飛来するといわれるウミウとが、どのような関わりをもつのか。様々な疑問が生じたので、今後もカワウとウミウの双方の観察を続けていきたい。

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