抄録
福井県では、近年ニホンザルの群れの農作物等被害が増加しており、被害対策が進められている。被害対策の促進には地域の加害群の行動様式を把握する必要があるが、北陸地域の情報は少ないのが現状である。そこで本研究では、福井県の自然群および加害群の行動圏を把握し生息状況を比較検討することを目的に、2019~ 2024年にかけて4群にGPS首輪を装着し行動圏の解析を行い、一部の群れで個体数調査を実施した。本発表では、加害群のなかでも顕著な集落依存を示した福井A群を中心に、4群の植生利用や集落への依存の程度を報告する。
群れサイズは、加害群の池田A群が43頭、福井A群が26頭、大野B2群が24頭の順に多く、自然群の池田C群の個体数は不明であった。カーネル法を用いて算出した行動圏が最も大きかったのは福井A群で95%:106.3㎢、50%:28.3㎢、最も小さい池田C群は95%:22.4㎢、50%:6.5㎢であった。群れサイズにより行動圏の面積が変化することが知られているが、福井A群は30頭以下の小規模な群れながら100㎢を越える広大な行動圏を利用していた(ただし、住民から得られた情報によると群れが分派している可能性があり、頭数は過小評価である可能性も考えられる)。また、植生図上の農地・住宅地から100m以内で測位された地点の割合を全測位期間で集計すると、福井A群が74.5%、大野B2群が32.6%、池田A群が26.8%であった。季節ごとに集計すると、福井A群では秋に割合が低く(9-11月、51.6%)、冬に高くなった(12-2月、91.5%)。一方、池田C群では季節による変化は大きくないことから、冬季に集落付近に滞在する割合が長いのは積雪以外の要因である可能性が高いと考えられる。加害群における頭数と行動圏の大きさについては、様々な要因が関わっているため、さらなる調査と検討が必要である。