霊長類研究 Supplement
第40回日本霊長類学会大会
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ポスター発表
半野生オランウータン個体群の遺伝的多様性と存続可能性の評価
田島 知之Vijay KUMAR佐藤 悠井上 英治村山 美穂
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会議録・要旨集 オープンアクセス

p. 101

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抄録
オランウータン( Pongo spp.)は絶滅危惧種であり、親を失って保護された孤児のリハビリテーション事業が各地で行われている。そこで形成された半野生個体群から他の生息地へと野生復帰させる事業も継続的に行われてきた。しかし、個体数が少なく、外部との遺伝的交流が限られた状態で繁殖を繰り返す半野生個体群では、遺伝的多様性の低下が一般的に懸念されている。本研究ではマレーシア・サバ州のボルネオオランウータンを対象として、半野生個体群(セピロク・オランウータン・リハビリテーションセンター)から28個体分、比較対象として野生個体群(ダナムバレイ自然保護区)から31個体分の非侵襲試料を採取して、マイクロサテライト11座を用いて2個体群の遺伝的特性を評価した。予想と反して、野生個体群に比べて半野生個体群で遺伝的多様性が低いという傾向は認められず、アレル数やヘテロ接合度はむしろ半野生個体群の方が高い値を示した。その理由として、半野生個体群には離れた地域から保護された個体が含まれることと、この野生個体群が過去にボトルネックを経験していることが考えられる。次に2つの個体群の人口学的要因や環境収容力、繁殖パラメーターの違いを考慮した上で、1000年間の個体群サイズの変動をVORTEX 10を用いて予測した。その結果、野生個体群は絶滅リスクが比較的低い一方、半野生個体群では条件によっては200年後以降の絶滅可能性が予測されたことから、長期的に維持するためには計画的な管理が必要であることが示唆された。
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© 2024 日本霊長類学会

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